米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を宣言した米トランプ政権の矛先は今後、中国にも向かう。だが、現状維持が自国利益にかなう中国は米ロに対話を促しつつ、ミサイル増強を進める構えだ。中国がこの問題にどう向き合うかは、世界が軍拡に向かうか、踏みとどまるかに大きな影響を与えそうだ。
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米国の離脱宣言を受けて中国外務省の耿爽副報道局長は2日、「遺憾を表明する」とのコメントを発表した。INF全廃条約は「世界の戦略バランス安定の維持に重要な意義を果たしている」としたうえで「中国は米国の離脱に反対し、米ロが対話を通じて適切に解決するよう促す」とした。
INF全廃条約に代わり、米国が求める多国間の軍縮枠組みには「政治、軍事、法律など複雑な問題が絡んでおり、多くの国が懸念を持っている」として反対を表明。「当面は既存の条約を維持することが不可欠だ」とした。
INF全廃条約の破棄にも、多国間条約にも反対するという中国の姿勢は、いまの枠組みが中国にとって最も都合が良いことを証明している。実際、中国は米ロが二国間で結ぶ軍縮条約の制約を受けることなく、ミサイル能力を量・質ともに大幅に向上させてきた。
中国中央テレビの軍事チャンネルは1月23日、「グアムキラー」の異名を持つ中距離弾道ミサイル「DF(東風)26」の発射訓練を内陸のゴビ砂漠で実施する様子を初めて報じた。核弾頭と通常弾頭いずれも搭載でき、射程4千キロを誇る。
中国共産党系の国際情報紙・環球時報はDF26に飛行制御の「羽根」があることから、空母のような動く目標も打撃可能だと分析した。DF26は2018年春の実戦配備後も詳細は明かされなかった。このタイミングで訓練を伝える意図について、中国外交筋は「南シナ海で『航行の自由作戦』を繰り返す米国などへの抑止効果を狙ったものだ」と語る。
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