日本医療安全調査機構は5日、2015年10月からの3年間で、人工呼吸器に関わる死亡事故の報告が8件あったと発表した。異常を知らせるアラームに看護師が気づかずに対応が遅れるなど、警報機能が生かされていない事例が目立った。再発防止策として、「適切な音量での警報音の設定」を提言する。
機構によると、亡くなった8人は入院中の60~80代の慢性呼吸不全の患者。7人は自発呼吸が残っていた。3人はのどを切ってチューブを差し込むタイプ、5人はマスクから酸素を送るタイプを使っていた。
8件のうち、5件は酸素を送る管の外れ、2件は食事介助などの際に切った電源の入れ忘れ、管の誤接続と充電を使い続けたことによる電源切れが1件ずつだった。管が外れたり、患者がマスクを外したりするケースは珍しくなく、人工呼吸器や患者の血中酸素、心電図をみるモニターには、異常を検知する警報機能がある。だが、今回の6件では看護師が警報に気づくまでに10分以上かかったり、認識できていなかったりしたという。
事故が起きたのは一般病棟と療養病棟で、重症患者が入る集中治療室などよりも職員が少ない。看護師1人で受け持つ患者が多いため、他の患者への対応で発見が遅れることがある。警報は食事やケアで一時的に人工呼吸器を外した場合も鳴るため、緊急性を判断しづらかったりするという。他の患者に配慮して、警報音を小さくしている場合もあるという。
機構は再発防止策として、警報音の適切な音量設定の必要性をあげた。また、自発呼吸があることで、人工呼吸器が生命維持に不可欠だと医療現場で捉えられていない可能性もあるとし、致命的になり得るリスクの認識や確実な患者の観察を提言している。(阿部彰芳)