「家がなくなるよ」
企業の後継者問題を解決 銀行が生んだ妙案とは
妻や親はこう言って、河野(かわの)佳史さん(49)の社長就任に猛反対した。
兵庫・淡路島のミサキ電機(洲本市)。1971年創業でパナソニック向けの照明器具の製造が主力だ。金属の鋳造、成形から完成品の企画、組み立てまで手がける。
河野さんは経理や人事、開発、営業など業務全般に精通。手腕を見込んだ創業者から、「お前しかおれへん」と後継社長に指名されたのだった。
だが中小企業の社長になるということは、会社の借入金の返済に個人として責任を持つ(経営者保証)ことを意味する。社長就任の要請が続いていた2007年当時、会社の業績は「どん底」で、家族の心配は当然だった。
日本では中小企業経営者の8割以上が会社の借入金を個人保証しているとされる。会社と社長の財産の境界があいまいなことが多いため、金融機関は会社と社長の信用力を一体で判断する。個人保証をとることで社長が真剣に経営に取り組む、という意見もある。
しかし倒産の際のリスクは社長に降りかかる。場合によっては私財を投げ出し、自己破産も覚悟しなければならない。
ミサキ電機の売り上げは5年連…