横浜市立中学校で給食代わりに利用されている配達弁当「ハマ弁」。利用率が低迷するなか、市は新たな利用促進策を打ち出したが――。(高野真吾)
ハンバーグ硬くて
1月下旬、同市鶴見区の中学校であった1年生向け試食会に行き、実際に食べてみた。
おかずは計4品。メインの「ハンバーグ和風ソースがけ」に「根菜のうま煮」など3品がついた。ご飯、みそ汁、牛乳もあり、なかなかの量だ。教職員と同じく470円を払ったが、生徒だと340円だ。
冷めないうちにと、用意された割りばしを持ち、みそ汁から口にした。温かさが胃にしみる。ご飯もホカホカしていた。
次にハンバーグにハシをつける。「おや?」。
一口大に割ろうとしてもハシが通らない。不思議に思いながら、力を込めるとハシが真ん中から割れた。
通常、ハシやスプーンは自分で用意する。生徒は割りばしは使わないかもしれないが、折れるほどハンバーグが硬いとはどういうことなのか?
区の担当者に見てもらうと、調理の不備ではなく、衛生管理の面から起きたことだと言われた。
担当者の話などによると、ハマ弁では食材の中心部を調理で85度以上に加熱した後、おかずの温度を19度まで下げる。食中毒予防のためだが、この過程でハンバーグが硬くなったという。確かに、ハンバーグの断面は冷たかった。
あるクラスをのぞいた。午後1時の昼食時間終了時点で、クラスの女子十数人で食べ終わって容器を重ねていたのは2人ほど。男子でも、ほとんどがハシを動かしている途中だった。
担任教師によると、全員でハマ弁を食べるのは初めてで準備に手間取ったという。「慣れが必要ですね」。昼食時間を10分ほど延ばす判断をしていた。
利用率2・6%→目標20%
「保護者の強い要望が、当日の注文ができない(のでできるようにして欲しい)ということだった」
先月25日に横浜市が開いた2019年度当初予算案の発表会見。林文子市長は、ハマ弁を当日に注文できる仕組みを同年度中に全校(145校)で導入する方針を明らかにし、理由をそう語った。
続けて、「当日注文を試行した学校においては喫食率(利用率)が上がった」と説明した。
ハマ弁は16年7月に一部の学校で始まり、17年1月に全校で導入された。ご飯の量を選ぶことができ、ご飯と汁物は温かい状態で出す。献立は栄養士が作成し、栄養バランスが整っていることが売りだ。価格は、ごはん、おかず、汁物、牛乳の4点で340円。
市は20年度の目標として「利用率20%」を掲げるが、現実は2・6%(昨年12月時点)と厳しい。林市長も「はっきり申し上げて低迷」と認める。
そんな状況を少しでも改善しようと、市は昨年8、9月から段階的に計12校で、ある試みを進めてきた。7日前までに予約する従来の仕組みから、当日でも注文できるようにしたのだ。試行を続けるなかで、利用率は1・6ポイントほど上がったという。
業者は事前に当日注文の数を予測してハマ弁をつくるが、試行を始めた当初は「売り切れが出ないように製造数を一定程度多くしていた」(市教委)。その結果、昨年12月までの約4カ月で、当日注文用に製造された計9673個のハマ弁のうち2492個(26%)が廃棄された。だが製造数の調整を進めた結果、1月には廃棄率は約5%まで下げることができたという。
当日注文を全校に拡大したとしても、全体の利用率の底上げは1ポイント程度とみられている。一方、市は19年度の目標として「15%」を掲げる。林市長は「ここが大いなる勝負」と意気込み、今後、試食会の開催や新中学生へのPRなどを実施するとしている。