豚コレラは人に感染せず、仮に感染した豚の肉を食べても人体に影響はないという。ウイルス学が専門の迫田義博・北海道大教授と青木博史・日本獣医生命科学大准教授にその理由を聞いた。
豚やイノシシに豚コレラが感染する仕組みはこうだ。ウイルスが体内に入ると扁桃(へんとう)腺などの細胞膜にくっつき、細胞内でウイルスが増えて全身に広がる。発熱などの症状が出て、約3週間で死に至る。さらにウイルスは体外へ出て、別の豚やイノシシにも広がる。治す薬はない。「豚コレラの伝染力の強さと致死率の高さは横綱級」と青木准教授は言う。
ただ、人と豚は細胞の構造が違うため、豚コレラウイルスは人の細胞膜にくっつけない。「ウイルスが鍵、細胞膜が鍵穴とすれば、鍵と鍵穴が合わない状態」と迫田教授。仮に人の体内にウイルスが入っても細胞には入れず、増殖しないまま消化されるという。
ではなぜ、豚コレラが発生した養豚場で、豚を全て殺処分しなければならないのか。迫田教授は「人には感染しなくても、豚やイノシシには一気に広まってしまうから」という。
いま流行している豚コレラは、死ぬまでに3~4週間程度の期間があり、治療薬もないため感染が広がりやすい。「感染拡大を防ぐには、豚コレラが発生した養豚場で全頭を殺処分し、消毒するしかない」と説明する。