投資関連会社「テキシアジャパンホールディングス」(千葉市中央区)の実質的経営者ら10人が逮捕された詐欺事件で、同社は出資者を四つのランクに分けていたことが、愛知、岡山両県警への取材でわかった。同社は、新たに勧誘した人数などで出資者同士が競い合うことで、組織拡大につなげていったとみられる。
テキシア社は2013年9月設立。1口100万円から出資をすれば毎月3%の配当金を1年間支払う、などと出資者を募っていた。17年までの約4年間で、全国の1万3千人から460億円を集めたとみられる。
愛知県警によると、出資者は下から一般会員(約1万1360人)▽エバンジェリスト(約1210人)▽マネジャー(約220人)▽ディレクター(約130人)の四つに分けられていた。一般会員が昇格するには、500万円以上の出資か、3人以上の新規勧誘が条件という。ランクが上がると、受け取る配当も増える仕組みだった。
さらに上のランクの「マネジャー」は勧誘や活動内容が「ディレクター」に認められた人が、「ディレクター」は同社の頂点をつかさどる実質的経営者の銅子(どうこ)正人容疑者(41)=詐欺容疑で逮捕=に認められた人が、それぞれ昇格する仕組みだった。上に行けば行くほど出資者の間では名誉とされていたという。一方、捜査関係者によると、銅子容疑者は容疑について黙秘しているという。
両県警は13日、テキシア社の勧誘のリーダー格だった7人も逮捕。7人は北海道や名古屋、福井など地区ごとに活動するなどし、それぞれのもとにディレクター以下のピラミッド状の会員組織があったことが分かっている。
「家族や友達誘った」自分を責める被害者
「途中からだまされているかもしれないと思いつつ、家族や友達を誘った。私は加害者です……」
東日本に住む60代の元出資者の女性は、テキシア社幹部らが詐欺容疑で逮捕された今も、自分を責め続けている。自らが出資した数百万円の行方以上に気に掛かるのは、自分の誘いで出資した人たちの存在だ。
出資額などに応じて四つのランクに分けられ、上に行けば取り分が増える仕組みを知った。「誘った人も得するし、自分もさらにもうかると思っていた。欲に目がくらんでしまった」
捜査関係者は「こうした仕組みは典型的なやり方。他人を勧誘させて(詐欺の)『共犯者』にすることで、訴えの声を上げさせない目的もあったのだろう」と話す。億単位の詐欺被害にあっても、他人を勧誘した自責の念から「これ以上関わりたくない」と、被害を警察に届け出ることを拒む人もいるという。
元出資者の女性は「誘った人には申し訳ないが、どうすることも出来ない。今は、一刻も早く忘れたいです」と話した。警察に相談するつもりはないという。(井上昇、田中恭太、山本知佳)