厚生労働省の「毎月勤労統計」などの不正問題で、政府統計に対する信頼が揺らいでいる。統計は、国や社会の姿を映す「鏡」と言われる。日本は戦前の反省から、「統計先進国」とされるまで力を入れてきた。今回の不正は、それを根底から覆すものだ。背景には何があるのか。
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毎月勤労統計では、従業員500人以上の大規模事業所について「全数調査」と定めている。それを厚労省の担当者は、2004年から東京都分について3分の1を抜き出す「標本調査」に無断で変更した。
根本匠厚労相は6日の参院予算委員会で、こう説明した。「東京都の500人以上規模の事業所(調査)を3分の1の抽出率にしても統計的には精度は変わらないというのが当時の判断。実は、そこで3倍に復元すればよかった」
根本氏が言うように、データを3倍にすれば問題ないように思える。だが、元統計学会長で政府の統計審議会(統計委員会の前身)の会長を務めた美添(よしぞえ)泰人氏は「『3倍にして復元すれば問題ない』というのは全く素人の考え」と断じる。どういうことか――。
全数調査は正確だが、コストが…