自動ドアの向こうに、色とりどりの野菜や果物が並ぶ。食品スーパーにとって店の入り口周辺は、客をいざなう特別の場所だ。
島根県益田市に本社を置くスーパー「キヌヤ」でそんな特等席を占めるのは、県中西部と山口県萩市に構える21店舗のどこでも「地(じ)のもんひろば」。その朝、地元で収穫された白菜やホウレンソウ、大根などの新鮮な野菜や果物、生花が客を迎える。
商品を持ち込むのは、ほとんどが兼業や家族経営の小さな農家。価格は農家自身に決めてもらい、12~15%の手数料を差し引いた残りが手取りになる。水準は当初、道の駅やJA直売所などより低めになるよう設定したという。市場の相場に左右されない安定収入を生産者に得てほしいとの思いがこもる。
生産者や加工食品業者が会員の「ローカルブランド協力会」を立ち上げ、キヌヤが地産地消にカジを切ったのは2010年。提案した専務の斎藤正美(69)の背中を押したのは、二つの危機だった。
そのころ大手スーパーやディス…