安倍晋三首相は20日夜、トランプ米大統領と電話で協議した。27、28日に行われる第2回米朝首脳会談に向けて方針をすりあわせ、核、ミサイル、拉致問題の解決に向けて連携することで一致した。また、トランプ氏が5月26日から国賓として日本を訪れることが電話協議で固まった。
首相は協議後、記者団に対し、拉致問題について時間をかけて話したとし、「トランプ大統領も私がいかに拉致問題を重視しているかということがよく理解できた。だから私も拉致問題を重視すると明確に述べた」と語った。米朝首脳会談について「核、ミサイル、そして重要な拉致問題の解決に結びつき、東アジアの平和と安定につながっていくことを強く期待している」と強調した。
ただ、日本政府内にはトランプ氏が米朝首脳会談で核、ミサイル問題で譲歩するのではないかと警戒する声がある。日本政府は米朝の実務者による事前協議について随時、説明を受けてきたが、日本政府関係者によると、必ずしも順調に進んでいるわけではないという。
今月上旬に米国のビーガン北朝鮮政策特別代表と北朝鮮の金赫哲(キムヒョクチョル)・元駐スペイン大使による初めての実務者協議があったが、米側から説明を受けた日本政府関係者は「具体的な進展はなかった」と話した。日米が求めてきたすべての核施設リストの申告や、非核化の行程表提出に北朝鮮が応じることは「もはや現実的ではない」(日本政府関係者)との見方も出ている。
こうした中で日本政府が警戒するのが「トランプ・リスク」。つまり、トランプ氏が成果を急ぐあまり、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会談で核・ミサイルの廃棄に向けて譲歩することだ。日米はこれまで、日本を射程に収めるものも含め、あらゆる射程のミサイルの廃棄を北朝鮮に求める方針を確認してきた。しかし、日本外務省幹部は「トランプ氏は米国本土を射程とする大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄だけを先行させてしまう恐れもあるのではないか」と指摘。トランプ氏が北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁緩和に動くのでは、との懸念も出ている。
そこで、日本政府は米朝首脳会談後も実務者協議を継続する仕組みづくりを期待する。ポンペオ米国務長官をトップに実務者レベルで協議を積み重ね、核・ミサイルの廃棄を着実に進めるとの狙いがある。日本外務省幹部は「今度の米朝首脳会談では、協議継続の枠組みづくりが最低限求められる」と話す。(鬼原民幸)
第2回米朝首脳会談に向けた日本の思惑
◇期待
・非核化に向けた具体的な進展
・米朝実務者協議の継続・定期化
・米朝首脳間で署名した文書の作成
・拉致問題の進展
◇不安
・米国が懸念する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄のみが先行
・対北朝鮮制裁の緩和
・人道支援実施による制裁の形骸化
・トランプ氏と金正恩氏の過度な接近