家庭以外で、子どもに朝食を出す場が各地に生まれています。地域のボランティアが学校の中で提供したり、夕食をふるまう「子ども食堂」が朝も活動を始めたり。家の事情で食べられない子におなかを満たしてもらい、成長を支えようという試みです。
「おはようございます」。午前7時半、大阪市立西淡路小学校の家庭科室に、ランドセルを背負った子どもたちが次々と駆け込んできた。
週3日、地域のボランティアが開く「朝ごはんやさん」。ある日のメニューは、湯気が立ち上る野菜たっぷりのスープに、ポテトサラダのサンドイッチ。毎回来るという三木彩輝さん(5年)は「みんなで食べる朝ごはんはおいしい」と声を弾ませた。
始業のチャイムが鳴る頃、女の子が1人、飛び込んできた。席に着くや、スープを口にし「お母さんがまた寝ちゃって」。ボランティアの女性は「おいしいやろ? いっぱい食べや」と笑顔で見守った。
スタートは2016年10月。西淡路地域活動協議会長の表西(おもにし)弘子さん(73)が、報道などで「子どもの貧困」の実情を知り、「目の前にいる子どもの生活を守りたい」と呼びかけた。地域に暮らす60~80代の女性11人が、4人ずつ当番制で調理を担う。
ご飯やパンに、おかず、デザート、飲み物がつき、子どもが払う金額は実費の4分の1にあたる1食50円。残りは大阪市の補助金や、フードバンクから提供される食材でまかなう。月ごとに全校児童410人に申込書を配り、30~50人が利用する。
親が忙しくて朝食を用意できない、経済的な理由で満足に食べられない、といった家庭の状況は尋ねない。子どもの間に垣根を作らないためだ。
「家の事情で食べずに登校する子も、1人で食事をする『孤食』の子もいる。朝ごはんをとる生活習慣をつけ、子どもたちの学習や成長を支えたい」と表西さんは話す。
当初は小学校に近い別の施設を使おうと考えたが、登校前に回り道をするのは子どもの負担が大きい。学校に相談したところ「家庭科室を使っては」と提案された。
部外者が校内に出入りすることや衛生面を心配する教員の声もあったが、ボランティアを信頼して鍵を預けることになった。福永雅士校長は「場所が学校なら、時間のロスが少なく、通学路からも外れないから保護者にとっても安心」と話す。
大阪府が16年、小学5年生と中学2年生を対象に実施した調査によると、朝食を毎日は食べていない子どもは約1割だった。
調査を担当した大阪府立大の山野則子教授(児童福祉)は、「『子ども食堂』のように食事を出す場所が学校にあれば、本当に必要としている子に届けることができる」という。学区外に出てはいけない、通学路を守るなどの校則があるからだ。部外者が校内に出入りすることへの危機管理を徹底するため、学校と地域がいかに信頼関係を築くかが課題だという。
大阪府堺市立福泉東小学校は地…