同性愛者であることを同級生に暴露される「アウティング」被害を受けた後、2015年8月に大学の建物から転落死した一橋大法科大学院生の男性(当時25)の遺族が、「被害を申告した後の対応が不十分だった」として同大に約8600万円の賠償を求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。鈴木正紀裁判長は「安全や教育環境への配慮義務に違反したとは認められない」として遺族の請求を棄却した。
訴状によると、男性は15年4月、同級生の男性に恋愛感情を伝えた。同級生は同年6月、男性と他の友人7人が入るLINEのグループに「おれもうおまえがゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめん」と送信。男性が同性愛者であることを、勝手に明かした。
男性は、翌7月以降に3回、大学のハラスメント相談室を訪れ、「同じクラスにいる同級生を見ると、吐き気がしたりパニックになったりする」と訴えた。転落死した8月24日は、相談員らと面談した後、「休むと留年になる」として模擬裁判の授業に向かい、建物の6階から落ちた。
遺族側は、「アウティングの被害を知った大学がクラス替えなどの適切な対応を取らなかった」と主張。大学側は「同性愛を苦にした、突発的な自殺で予想することは不可能だった」と反論していた。提訴は16年3月で、当初はアウティングをした同級生も被告として訴えていたが、18年1月に和解が成立した。(北沢拓也)