ワシントンからハワイまで、サンフランシスコ乗り継ぎで13時間。痛む腰をさすりながら空港を出ると、日もすっかり暮れたホノルルは小雨に包まれていた。
先月末、時に零下10度を下回るワシントンでは、冷え冷えとした気持ちにさせられた。トランプ氏は、選挙中からメキシコからの不法移民を「強姦(ごうかん)犯」と呼び、国境での壁建設にこだわり続ける。民主党との対立は、1カ月以上にわたる政府閉鎖を招いた。私が到着したときは、政府閉鎖が解かれたばかりだったが、入国審査官は、まだ給料が出ていないと渋い顔だった。
シンクタンクやメディアの知人からは、今後の米朝交渉で、十分ではない非核化措置や戦争の終結宣言と引き換えに、在韓米軍の撤退や縮小が決まったら、日本の世論はどう反応するのか聞かれた。多くの日本人の不安感が増し、ナショナリズムの台頭を招く恐れはないか、と。
25度のホノルルは、温かい気持ちにさせてくれるだろうか。
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翌日、久しぶりに再会したのは1月初めまで下院議員を務めたコリーン・ハナブサ氏(民主党)だ。日系4世である。
米国議会の重鎮で、日米関係の安定にも尽くした故ダニエル・イノウエ上院議員の信任が厚かった。イノウエ氏は、日系人で組成された米陸軍第442連隊に入って欧州戦線で戦い、右腕を失った。
ハナブサ氏にとっても、戦争や人種差別は身近である。叔父は広島の原爆で亡くなり、祖父は日系人の強制収容所に送り込まれた。ハワイのホノウリウリ収容所は、「地獄谷」と呼ばれていた。
「メキシコの壁」について、ハナブサ氏はこう思う。トランプ氏は、米国人の「恐怖(fear)」を利用し、政治的なシンボルにしている、と。米国が世界での支配的な地位を失っているという「恐れ」、そして移民によって自分たちの職が奪われるという「恐れ」である。
第2次大戦中、日系米国人が強…