97歳にして、植木金矢は現役の漫画家として活躍している。かつては少年漫画誌の人気連載作家として知られ、劇画の草分け的存在でもある。一線を離れたこともあったが、80歳を超えて商業漫画の世界に復帰。90歳を超えてさらに創作は盛んになり、昨年末には約200ページの単行本も出版した。
両手両足を使って自宅の階段を上り、2階の一室にある仕事場で植木は毎日作画に取りかかる。アシスタントはおらず、全て1人での作業だ。90歳を過ぎてからは視力も落ち、手の震えも出てきた。直線を引くのに難儀し、細かい絵はもう描けない。掲載誌を見て若い漫画家の作品と見比べると、自分でも作品が古いと思う。
それでも描き続けるわけは? 「執念だろうなぁ……。この年になると思うように描けないのはもう仕方ない。でも頭の中にはストーリーが浮かぶから、やれる範囲で何とかね」と穏やかに語る。
1921(大正10)年生まれ。「漫画の神様」手塚治虫や、晩年まで健筆をふるった水木しげるよりも年上だ。子どもの頃は田河水泡の「のらくろ」を愛読して絵描きを目指したが、父親は大反対。戦時中は中国で従軍した。
終戦後、工場で働く傍らで出版…