権利者の許可なくインターネットに上げられたと知りながら漫画や写真、論文などをダウンロードすることを違法とする著作権法改正案について、自民党は13日、目指していた通常国会への提出を見送ることを決めた。文部科学部会と知的財産戦略調査会の幹部が会合を開き、文化庁に法案の再検討を求めた。
赤池誠章部会長は会合後、記者団に「関係者や国民の不安、懸念を払拭(ふっしょく)すべく丁寧な手続きを進め、次期国会に向けて仕切り直しをすべきだ」と話した。法改正案には、海賊版サイトに誘導する「リーチサイト」規制も盛り込まれていたが、こちらも同時に見送られることになった。文化庁が臨時国会に向けて改めて法案内容を練り直す。
法案をめぐっては、個人の知的な活動の基盤となるネット上の情報収集が萎縮すると懸念が相次いでいた。著作権法の専門家や日本漫画家協会などは「権利者の利益が不当に害される場合」などのダウンロードに限って違法とするよう絞り込む修正を求めてきた。
党内にも修正に同調する声があり、MANGA(漫画)議連会長の古屋圭司元国家公安委員長は通常国会への提出見送りを主張。文化庁の提案通りの隙間ない海賊版対策を支持する甘利明・党知財戦略調査会長らと意見が分かれていた。
2月22日と3月6日にあった部会の会合では、いずれも最終的に赤池部会長と甘利調査会長へ結論が一任されたものの、その後もコミックマーケットの主催団体などで作る全国同人誌即売会連絡会やポップカルチャー分野の消費者団体・エンターテイメント表現の自由の会、図書館員や研究者らでつくる図書館問題研究会、日本建築学会など、幅広い分野の団体から法案の提出見送りなどを求める意見表明が相次ぎ、最終的な調整が続いていた。(上田真由美、豊岡亮)