高知市南部の丘陵地を歩くハイキング愛好家の間で「山の神様」と慕われる男性がいる。高知県南国市の山中松男さん(95)。90歳をすぎてから一帯にある鷲尾山(標高306メートル)に登り始めた。登頂は19日までに670回に達した。
一歩一歩に力がみなぎっている。息をきらさず、リズムを崩さない。小さな段差も、片足に体重をのせ軽々と越える。「目をつぶってでも登れる」
2月22日午前8時半、山中さんは鷲尾山の頂に着くと、眼下の街並みと先に広がる太平洋に目をこらした。これで663回目の登頂だ。
電気関連の建設会社に40年以上勤めた。登山は30年前、退職後の第二の人生の趣味として始めた。鳥取県にある大山や愛媛県の石鎚山、福島県の磐梯山など「日本百名山」の山にも挑戦した。だが、90歳をすぎ、自宅から通いやすい低山の鷲尾山に絞った。
登るのは火曜と金曜の週2日。午前4時に起き、6時半に家を出る。一人でバスを乗り継いで山へ向かう。以前は隣山の筆山から約5キロを縦走していた。大人の足で往復2時間ほど。けがをしてからは近くまでバスで行き、帰りは山頂から筆山を通り2時間以上かけてJR高知駅まで歩く。
「お元気やね。今日も会えた」…