公立中高一貫校の入学者選抜で用いられる、「適性検査型」の入試を実施する私立中が増えている。公立中は倍率が6~8倍を超える学校が多く、試験のチャンスは一度きり。そこで、不合格となった受験生の「受け皿」になろうという私立中が実施を始めた。大学入試改革を控え、思考力などを重視しようという思いもある。(小笠原一樹、平岡妙子)
西武池袋線・所沢駅前の所沢くすのきホールで1月11日、聖望学園中学(埼玉県飯能市)の「適性検査型入試」を約200人が受けた。
入試は、資料やグラフなどから必要な情報を読み取り、計算や記述で答える内容。塩や砂糖の水溶液が凍る温度のグラフを示し、「冬、寒い中で育った野菜が甘くなる理由を、グラフのデータと関連させて説明しなさい」と記述を求める問題もあった。暗記した知識を問う、従来の私立中学入試とは大きく異なる。
聖望学園がこのタイプの入試を始めた理由の一つは、公立の中高一貫校向けの準備をしてきた受験生にとって、併願しやすくなることだ。都立大泉高校付属中学校などの志望者を狙い、2016年度から開始し、会場も都内から便利な所沢駅近くとした。始めると、期待以上の志願者が集まった。
今年の入試を受験した息子に付き添っていた東京都練馬区の女性(50)は「本命は都立の中高一貫校で、練習で受けに来た。都立と同じような問題なので、自分の力を出し切って受かってもらいたい」と話した。東京都東久留米市の母親(42)は「適性検査が受けられる貴重な練習の機会だ。学校見学もしたが、雰囲気が良かった」と語った。
聖望学園は一般の4教科入試もしており、適性検査型入試を受けて入学する生徒は毎年数人程度。ただ、リーダー的な生徒に育っており、学校を広く知ってもらえることにも効果があるという。関純彦校長(55)は「私立中は偏差値で輪切りにされ、似た感じの生徒が集まる傾向がある。適性検査で入る生徒は異なるので目立つ。学校が多様化し、良い影響がある」と話す。
千人を超える志願者
10年前から「公立一貫型入試」として適性検査型を始めた宝仙学園中高共学部理数インター(東京都中野区)は毎年、千人を超える志願者を集めている。
きっかけは、公立中高一貫校の問題を見た富士晴英校長が「面白い」と思ったことだった。「この問題を解ける生徒が来てくれたら、いままでとは違う子どもたちに出会えるだろう」と考えたという。当時は適性検査型の問題を出す私立中がほとんどなかったことから評判となり、志願者も徐々に増えた。
当初は試験慣れのために受け、都立中高一貫が不合格ならば地元の公立中に行く生徒が多かった。だが、現在は四教科型よりも、公立一貫型を受験して入学する生徒の方が多い。公立一貫型の生徒は、塾での勉強疲れがあまりなく、のびのびとした子が多いといい、「入学者の雰囲気が明るくなっている」という。知識の量が多くなく、宿題への意識が低い生徒もいるが、「ゼロから教えること」を徹底している。
同校の中野望入試広報部長は「1種類のテストで12歳の子どもを選ぶのではなくて、様々な形の試験方法があって良い。学習レベルにばらつきがあっても、入ってから伸ばしていく」と話す。
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