結婚披露宴は会費制。相場は1万8千円。地元のそんな風潮に一石を投じようと、ホテル青森(青森市)が披露宴の見直しを提案している。背景には、秋に控える消費増税があるようだ。
ホテル青森は2月、「ウエディングプレビュー」を開催。来場者に料理を試食してもらったり、会場演出のオプションメニューを紹介したりして、会費を上積みすることで披露宴を豪華に演出する選択肢を持ってもらう狙いだ。
たとえば通常コース(1万円)の料理に追加料金を支払えば、肉のメニューならカモ肉から牛フィレ肉に、魚はキンメダイから伊勢エビに「昇格」できる。披露宴会場ではキャンドルをともして厳かな雰囲気を演出するとともに、各テーブルの中央には純白のコチョウランを据えた。通常料金では用意できないプランという。
ホテル青森に限らず、青森市内で開かれる結婚披露宴の多くが会費制。1万8千円が相場のようだ。招待状には金額が明記され、受付ではお札が見えるように封筒から出した状態で渡すのが一般的という。
しかし全国的には、招待状に金額は明記されず、出席者は「ご祝儀」を持参する形が主流。お祝いの意味合いが含まれるためか、会費制より額が高くなる傾向があり、3万円が一般的な相場のようだ。
ホテル青森で結婚披露宴を開くカップルは現在、年間約120組だが、15年ほど前と比べると約4割減。晩婚化や価値観の多様化が背景にあるとみられるが、ご祝儀制と会費制の金額の差が、結婚式離れにつながっているのではないかとホテルはみる。「県外でご祝儀制の披露宴を体験した人が、青森の披露宴を見て『これにお金は出せない』と思ってしまう」とウェディング課の山本東課長は分析する。
さらに、10月に消費税増税が実施された場合、これまでと同じ額の会費では料理などの質が低下しかねない。披露宴の魅力がさらに失われる可能性を懸念しているという。
ホテル青森はウエディングプレビューのような取り組みを重ね、2~3年かけて会費制の相場を2万円まで上げて、より魅力的な披露宴を開けるようにしたい考えだ。山本課長は「披露宴に出席した人に満足してもらうという一つ一つの積み重ねが、ホテルで多く披露宴を開いてもらうことにつながる」。
将来的にはご祝儀制の文化を根付かせたいというが、その場合、出席者の負担はますます増えることに。「金額に見合う結婚披露宴の価値を創造していくしかない」と山本課長は話す。
■北海道も会費…