奈良県明日香村の特別史跡、キトラ古墳(7世紀末~8世紀初め)の石室に描かれた極彩色壁画(重要文化財)のうち、泥に覆われた壁面の漆喰(しっくい)に、獣頭人身の十二支像の「辰(たつ)」が残っている可能性のあることがわかった。文化庁が22日、東京都内で開かれた「古墳壁画の保存活用に関する検討会」で新たなX線画像を公開し、報告した。
キトラ古墳壁画は現存する世界最古とされる本格的な天文図や、中国古代思想の方角の守護神「四神(しじん)」などが描かれ、今月18日の文化審議会で国宝に指定される見通しになった。
東西南北の四神の周りには服を着て武器を持つ十二支像も描かれたとみられる。「子(ね)」「丑(うし)」「寅(とら)」など一部の像は肉眼で確認できるが、漆喰ごとはがれ落ちたり、泥に覆われたりしているため、確認できない像も多い。文化庁は2010年、「辰」「巳(み)」「申(さる)」が描かれたとみられる今回と同じ場所をX線撮影したが、巳と申の像は確認できず、辰もぼんやりとした影のようなものが見えたにすぎなかった。今回は最新のX線機器で撮影し、約15センチ大で、左を向いて立つ辰とみられる像を確認した。
調査にあたった高妻洋成(こうづまようせい)・奈良文化財研究所埋蔵文化財センター長は「前回の撮影より輪郭のコントラストがはっきりし、泥の下に辰の絵が残っている可能性はある。今後も調査を続けたい」と話す。(田中祐也)