日本天文学会は、人類の安全や平和を脅かすことにつながる研究や活動は行わないことにした。防衛省が研究資金を出す「安全保障技術研究推進制度」が始まったのをきっかけに2017年から議論し、代議員の3分の2の賛同を得た。だが、若い世代からの反発もあり、同制度への応募の可否には踏み込まなかった。
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同学会は16日に声明を発表。声明は、学会の設立目的は「真理の探究」にあるとした上で、「科学に携わる者としての社会的責任を自覚し、人類の安全や平和に貢献する」とした。宇宙から届く弱い信号をとらえる技術のレーダーへの転用など、天文学の知見は「戦争に利用される可能性を常にはらんでいる」ことを、声明の背景を説明する文書に盛り込んだ。
ただ声明では、防衛省の制度そのものについてはふれなかった。学会員800人超へのアンケートで、全体では制度に反対する人が54%とわずかに優勢だったが、若い世代では賛成が多かったことに配慮した。
具体的には、賛成は20代では68%、30代でも52%。研究資金の確保が難しくなるなか、「できるだけ多くの競争的資金公募に応募せざるを得ない」「組織が個々の研究者の応募を制限すべきでない」との意見もあった。一方、年齢層が上がるほど賛成は減り、70代以上では19%にとどまった。
40代の会員は、「『軍事研究禁止』とまで言わなかったことは評価できる。ただ、あいまいで人畜無害な声明でも(軍事研究を全否定したと)曲解されることはある。学会が一体となって社会にメッセージを出すことに抵抗感がある」と話した。
日本学術会議は17年、軍事研究とみなされる可能性のある研究について、各学会などが規制の指針を設けるよう求める声明を出している。天文学会長の柴田一成・京都大教授(64)は「(防衛省の制度に)若手の賛同が多く、ショックだった。国からの研究費が減っていることも理由ではないか。指針については今後も議論を続ける」と話す。(小宮山亮磨)