沖縄に駐留する米海兵隊の中核を担う「第31海兵遠征部隊」(31MEU)が1992年に設置され、初めて沖縄で実施した訓練の詳細が米公文書で分かった。クーデターに追われた友好国の大統領を救うというシナリオ。沖縄の基地を長期間使うとの目標を掲げた上で、その内容を沖縄の人々に知らせるべきでないと隊員に釘を刺していた。
31MEUは米軍再編後、唯一の地上戦闘部隊として沖縄に残ることが決まっている。朝日新聞の請求に対して米海兵隊が公開した31MEUの部隊年報の中に、92年11月に実施した訓練計画があった。
それによると、シナリオは、沖縄に近い仮想国「プガンダ」で軍事クーデターが発生し、大統領は米大使に救助を求めたが、大使館も包囲される――との設定だった。訓練場所は主に本島北部で、金武(きん)ブルービーチ訓練場(沖縄県金武町)にボートで上陸。戦闘訓練施設にいる大統領を救出する手順だった。
当時は冷戦終結の直後。部隊年報によると、31MEUは、東アジアや中東の不安定化をにらんで設置され、非戦闘員救出作戦(NEO)や飛行場制圧、災害救援を含む人道支援など10以上の任務を負った。部隊は訓練の目的について、国際情勢の流動化に備え、幅広い任務を実行するため、と位置づけていた。
当時、初代司令官として31MEUを率いていたジェリー・ハンブル氏(71)はシナリオについて「台湾などで色々なことが起きていた」と話し、念頭にあった事態の一つは台湾有事だったことを取材に明かした。
訓練計画は、米軍駐留をめぐって日本政府と沖縄の人々との間に対立があることにふれ、「我々のゴールは長期間、沖縄の基地を使用可能にすることだ」と指摘。「訓練の詳細は沖縄の人々にとって政治的にセンシティブ(敏感な問題)」だとして、訓練情報を「沖縄の人々に公表すべきでない」とした。
その前年の91年には、沖縄の米軍基地から湾岸戦争へ多くの米兵が出動し、市民から反対の声が上がった。訓練計画は「米軍の存在が沖縄にある限り、潜在的に政治的な論争が起こりうる」と分析している。ハンブル氏は取材に「反対派の干渉が危険をもたらす可能性があった。(保秘は)安全上の理由だ。すべての人に訓練について知ってもらいたいわけではない」と語った。
現在、米軍が日本国内の訓練区…