この春、大阪府知事と大阪市長のダブル選が激しく繰り広げられている中で、大阪府内の公立学校の校長3人が退職した。「学力向上」に向けて、全国的にも注目を集める改革が打ち出されてきた大阪の教育現場。3人の目に映った姿は、対照的だった。(金子元希)
出直しダブル選・住民投票…大阪都構想の行方は
ガガガというドリルの機械音が辺りに響き、土ぼこりが舞う。3月20日、大阪市の府立西淀川高校。41年前の開校からずっと校門にあった門標が外された。3月末に退職を控えた重田(しげた)明彦(としひこ)校長(63)が見守る。
2012年施行の府立学校条例は、3年連続で定員割れして改善の見込みがない高校は、再編の対象になると定める。その後に府教育委員会と市教委がまとめた計画では、計8高校が募集停止の対象になった。西淀川高もその一つ。別の高校と統合され、2月に最後の卒業生を見送った。
背景に、私立高校の授業料無償化があった。
10年度に当時の橋下徹知事が「公立と私立で切磋琢磨(せっさたくま)を」と始めた制度で、年収によって授業料が実質無料となる。国の制度に上乗せする形で、全国で最も手厚い支援だ。かつては公私の生徒数で7対3の分担比率があったが、府内の公立中を卒業して高校に入った生徒のうち、18年度は私立が34・5%を占めた。私立を選ぶ生徒は8年前より4千人増えた。
公立でも特色を出す施策が打ち出され、進学で実績のある高校には予算が重点配分された。小中学校の内容の学び直しなどに取り組む学校の指定も進んだ。西淀川高はいずれも漏れた。
重田さんが同校の校長に就いたのは11年度。生徒に向き合い、教員には徹底的に個々の生徒と関わるよう指示した。あまり行われていなかった家庭訪問も進めた。私立になじめず、入り直してきた生徒もいた。授業料は無償化されても、制服や修学旅行代の出費が負担だった、と聞いた。
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