世界最小のクマとして知られる「マレーグマ」。東京・上野動物園へ見に行ってみると、1頭のメスがけだるそうに運動場をうろつき、つぶらな瞳はどこか眠たげな感じがした。
このマレーグマ、個体どうしで互いに表情をまねることが、英ポーツマス大などのチームによる研究でわかった。研究者の予想を覆す高度なコミュニケーション能力だという。英科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に論文が掲載された。
チームは、ボルネオ島のマレーグマ保全センターで、2歳から12歳の22頭を観察。300回以上の遊び行動を記録した。21頭が口を開けるしぐさを見せ、このうち13頭は対面する仲間が口を開くと、1秒以内に同じしぐさを見せた。歯を見せるか見せないかなど、細かな表情のパターンもまねてみせたという。
表情を使ったコミュニケーションについては、霊長類のゴリラなどでも報告されているという。マレーグマは単独で行動する習性があるが、チームは「集団で暮らさない動物にも、潜在的な社交性があるのかもしれない」と分析している。(川原千夏子)