旧優生保護法(1948~96年)の下で障害のある人らに不妊手術が行われた問題で、衆院厚生労働委員会は10日、被害者に一時金320万円を支給する救済法案を委員長提案の形で衆院に提出することを全会一致で決めた。11日の衆院本会議で可決し参院に送られ、4月中に成立する見通し。ただ、被害者は法案に納得しておらず、全面解決にはつながらない状況だ。
旧優生保護法は強制的な不妊手術も認めていた。救済法案は与党ワーキングチーム(WT)と超党派議員連盟(議連)が並行して検討し、最終的に一本化して与野党の合意を得た。10日の衆院厚労委では、冨岡勉委員長が法案の趣旨を説明した。
冨岡氏は、前文に「多くの方々が、生殖を不能にする手術または放射線の照射を強いられ、心身に多大な苦痛を受けてきた。我々は、それぞれの立場において、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」と明記したことを強調。「我々」が誰を指すのかあいまいとの批判を意識し、「旧優生保護法を制定した国会や執行した政府を特に念頭に置くものだ」と述べた。
ただ、各地で続く国家賠償請求訴訟への影響を避けるため、おわびは違憲性と直接絡めない形となっており、冨岡氏も違憲性には一切言及しなかった。
被害認定は、被害者本人からの請求に基づいて行い、認定された人には一時金を支給する。手術の記録がない場合などは、本人の説明などから総合的に被害の有無を判断するとした。
救済法は大型連休の前後に施行される見通し。被害認定の翌月の月末には一時金が支払われる。
一方、被害弁護団は同日発表した声明で、「国の謝罪」が明記されていない▽一時金が低額▽救済対象に配偶者や遺族が含まれない、といった点を挙げ、「多くの被害者の被害回復が図られるか疑問」と批判。被害女性が仙台地裁に起こした国家賠償請求訴訟の判決が5月28日に言い渡されることに触れ、「判決内容によっては法律の見直しを求める」とした。
7地裁で続く20人による同様…