複雑に入り組んだ大阪・梅田の地下街で、半世紀にわたって待ち合わせ場所として親しまれてきた「泉の広場」。老朽化のため地下街の改装工事が始まるのに伴い、広場のシンボル、噴水が5月に撤去される。最後の思い出をつくろうと、「別れ」を惜しむ人たちでにぎわっている。(坂東慎一郎)
GW明け、噴水撤去
泉の広場は、地下街「ホワイティうめだ」の一角にある。繁華街の阪急東通商店街やお初天神に近く、待ち合わせ場所や憩いの場として長く愛されてきた。
大阪市港区の河村絵里さん(44)は子どものころ、家族で梅田まで食事に出かけた際、泉の広場に立ち寄ったのをよく覚えている。「季節ごとに噴水の装飾が変わるのが楽しみだった。梅田の地下街のシンボルがなくなるのは、大阪の人間としては悲しい」
吹田市の清水義之さん(60)は、会社員時代、2次会の待ち合わせで、ほろ酔いで腰掛けていた噴水の縁から水中に転げ落ちた。「びしょぬれになって飲みに行けなくなったのも良い思い出」と振り返る。
泉の広場はホワイティうめだの前身「ウメダ地下センター」が拡張されるのに伴い、1970(昭和45)年に登場。「地下街は味気ない」「憩いの場がほしい」という声を受けて、つくられた。
初代の噴水は、天井のシャンデリアが特徴だった。「地下街で水を引いた噴水は珍しい」と好評で、硬貨を投げ入れる人が多くいたという。81年に改装された2代目は白を基調とした明るいデザインで、噴水が階段状に。歩行者に配慮し、半円形に縮小された。
現在の3代目が登場したのは2002年。イタリア・ミラノの彫刻家がデザインした大理石製だ。ドーム形の天井に青空を描き、開放的な空間になった。ホワイティうめだを運営する「大阪地下街」リニューアル推進課の薗村真紀子さんは「時代に合わせてその形を変えてきた」と振り返る。だが、災害時の避難の妨げになることやイベントスペースに活用することなどから、今回の改装で撤去されることになった。
改装される「ホワイティうめだ…