「みなに迷惑がかかっている」
富俊さんが閉じ込められていた小屋=沖縄県
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沖縄県本島北部の集落。その小屋は、周囲を草木に覆われた場所にあった。
コンクリート造りで高さ約2メートル、広さ約5平方メートル。出入り口は鉄の扉で閉ざされ、窓はない。外部とのつながりは食事の受け渡し口と壁に五つ開けられた直径10センチほどの穴。そして足元にある排泄物(はいせつぶつ)を流す溝。それだけだった。
精神障害があった富俊(とみとし)さん(名字は非公表)は、自宅敷地内に建てられたこの小屋に1952年から約13年間、閉じ込められていたという。
精神障害者を合法的に家に閉じ込める「私宅監置」は、公的施設の不足を背景に1900年制定の「精神病者監護法」で導入され、1950年に廃止された。
ただ、私宅監置の研究を続ける愛知県立大学の橋本明教授(精神医療史)によると、戦後米国の統治下に入った沖縄では72年の返還まで琉球精神衛生法で私宅監置が容認された。「沖縄には私宅監置に使われた小屋が今も残っており、関係者も生きている。私宅監置の過去を継承できる唯一の場所です」と橋本教授は語る。沖縄以外で現存する小屋は確認できていないという。
小屋を訪ね、関係者に話を聞く…