いまを生きる私たちの周りには、多くのモノや情報があふれている。それらを数値化したデータは、世の中の出来事を理解する糸口になるが、どの程度の「量」なのか実感としては捉えにくい。取材を元に、1日、1週間、1カ月の時間軸で、今の日本で起きている社会現象の「数」を、それぞれ1枚の写真に映し出してみた。
3千いいね!写真で表現 カメラマンが着目したのは瞳
3000「いいね!」の写真をよく見ると…
インスタグラマーの松本優さん(22)が1枚の写真で1カ月に集める「いいね!」の平均件数。月に30~40枚の写真を投稿し、合計では10万「いいね!」を超え、フォロワーも7万人を超える。夕日を浴びてほほえむ自撮り写真に1カ月で集まる「いいね!」の数だけ瞳の画像を重ね、本人に投影した。
近畿大学に通いながらモデル活動やイベント出演などをこなす。インスタグラムは中学3年から始め、ライフスタイルを紹介する写真や飾らない雰囲気のライブ配信などで同世代を中心に支持を集めている。
「フォロワーが1万人を超えたときは感動したのに、今は千人増えても、大きな数字に慣れてしまって、『もっと見てほしい』という気持ちの方が強い」(加藤諒)
1日の荷物を積み上げると…
運送業「T.M.G」(大阪府茨木市)の配送スタッフの男性(24)が繁忙期に配る荷物の数。
「効率よく配れるよう配送順を頭の中で組み立て、荷物を積み込んでいます。配達を終えたときは達成感があります」。
同社の茨木物流センターには、1日に数千個の荷物が運び込まれ、約40台のトラックで茨木、高槻、摂津の府内各市の家庭に荷物を届ける。同社は8年前から大手ネット通販サイトの配送を請け負う形で宅配業界に本格参入した。ネット通販の成長に伴い、西日本を中心に展開する同社の物流センターの数は、昨年初めから今年3月までで9から33に増えた。
国土交通省の調査によると、国内の宅配便取り扱い個数は2017年度で39億5100万個。10年間で約7億個増加している。(細川卓)
1週間で飲む薬の量は…
グラスを手に持つ女性が服用していた薬の数。糖尿病、高血圧、胃薬、整腸剤など計13種類にもなる。
薬の多剤併用で害があるものを「ポリファーマシー」と呼び、6種類以上で物忘れやふるえなど、副作用のリスクが高まるという。この80代の女性は、自宅でスリッパを履こうとしてふらつき転倒。左足を骨折し宝塚市立病院(兵庫県)に入院した。ふらつきの原因に多剤併用の副作用が疑われ、患者の減薬に取り組む同院で6種類に見直された。
「十数年飲んできた薬を減らしたけれど、痛みもないし、体調に変わりはない」と、女性は話す。
2018年の厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」によると、保険薬局にかかる75歳以上の約4割が5種類以上の薬を処方されている。多剤の処方は、飲み忘れや飲み残しにもつながるとされ、08年の日本薬剤師会の試算では年間約500億円分が無駄になっているという。(遠藤真梨)