子どもたちが乳児院で暮らす理由は様々だ。親による虐待や親の死亡、経済的困窮など。うえだみなみ乳児院(長野県上田市)では、乳児院としては異例の里親養成・支援事業に加え、こうした事態を招かないための予防策にも、力を入れる。
「親の代わりにはなれない」 乳児院が異例の里親養成
「生活環境の変化は子どもの体調にも、影響することがあります」
「何かあったら、小さなことでも遠慮なく相談してくださいね」
同乳児院は今年1月、乳児院から子どもを引き取り、一緒に暮らし始めた実の親と、日頃からこんなやり取りをするサポート事業を始めた。乳児院側から定期的に連絡を取って信頼関係を築き、虐待などで再び乳児院に預けるような状況に陥ってしまう前に相談してもらうのが狙いだ。メールやLINEを使って年中無休で対応。直接、家庭を訪ねることもあるという。
昨年11月からは長野県坂城町と協力し、一般の親向けの子育て講座も開催。相談しやすい相手をつくり、1人で悩んでしまいがちな子育て中の親でも居場所があると伝えることなどが目的だ。今年3月には、予期しない妊娠で悩む人の相談を無料で受ける事業も県の委託で開始。電話で24時間対応するほか、同乳児院のホームページからも相談できる。匿名でも可能という。
こうした事業に相次いで取り組むのは、丸山充院長(49)の考えによるところが大きい。元々は社会福祉法人「敬老園」が営む高齢者施設の介護職員。2011年に同法人が上田市から市営乳児院を譲り受け、うえだみなみ乳児院としてスタートさせると、職員や院長として勤務してきた。
当事者としてつらかったのは、…