北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として同行した日本維新の会の丸山穂高衆院議員(大阪19区)が、北方四島の返還に関連して「戦争しないと、どうしようもなくないですか」などと訪問団の団長に詰め寄った問題で、地元北海道では、四島出身者が多く住む根室市を中心に戸惑いや怒りが広がった。
歯舞群島の勇留島の元島民で、千島歯舞諸島居住者連盟根室副支部長の角鹿(つのか)泰司さん(82)は8歳のときにソ連軍の侵攻に遭い、翌年、何も持たずに島を命からがら脱出した。「戦争のために我々は島をとられて苦労した。だから戦争は絶対してはならない。そんなことを、まさか国会議員が言うとは」と驚く。
心配するのは、故郷に戻れる数少ない手段のビザなし交流が「1人の勝手な言動での規制が厳しくなる」ことだ。「我々も年をとり、運動を2世、3世に託す時にある。自由な交流ができないと、大きな支障となる」と不安を口にする。
訪問団の一人、北見市の元島民2世(志発島)北村浩一さん(59)は、国後島で丸山議員の言動に「有志」という形で抗議した。酔って宿舎内の部屋に入り込み、大声で議論をふっかける丸山議員を、事務局は繰り返し制止しようとしたという。「戦争」発言は帰港後、報道で知ったが、「ロシアとの折衝にマイナスになるのであれば、本人はしっかり責任をとってほしい」。
北方領土問題にくわしい北大スラブ・ユーラシア研究センターの岩下明裕教授は、「日本とロシアが交渉で紛争を解決しようとしているのに、戦争で島を取り戻すというのは、国際法と現実政治の理解の点で議員の資格を根本的に欠く。(丸山発言で)ロシア側がビザなし交流の見直しを求める恐れがある」と話している。(大野正美)