乳がん手術で乳房を摘出してからも、おしゃれなブラジャーをつけたい――。自身も乳房を摘出した女性が会社を立ち上げ、患者向けの下着をつくっている。こだわりは「ふつうの下着と変わらない、華やかなつくり」だ。
女性は、下着の企画・販売会社「アボワールインターナショナル」(京都市下京区)代表の中村真由美さん(57)=同区。2011年に乳がんで両乳房を摘出した。
術後は腕を上げられなくなったり、わきのリンパ節に転移したがんを切除することで知覚異常が起きたりして、ふつうの下着を着られない人が多い。中村さんもその一人だった。
退院後、当時勤めていた金融関連会社への復帰に向け、下着を買いに行った。目にした患者用の下着は、傷が隠れるよう胸の部分の布が大きく、色もベージュや茶、黒だった。ひどく地味に見えた。40年ほど前、乳がん手術を受けた祖母が似た下着を着ていたのを思い出し、「変わっていない」とがっかりした。
「気分が明るくなる下着を」と思ったが、なかなか見つからない。デザインや縫製は素人で、自分ではつくれない。そこで、14年に下着メーカー「エレーヌ」(京都市伏見区)を訪れて、ふつうの下着の改良をもちかけた。同社のデザイナーらに協力してもらいながら、一般に販売している下着にパッドを入れるポケットをつけ、わきの下の部分の締めつけや肩ひもの食い込みで苦痛を感じないようにした。試作品を乳がん手術を経験した知人たちに試着してもらい、素材や形の要望を反映。何度も作り直してもらった。
15年に納得のいく下着が完成…