日産前会長カルロス・ゴーン被告(65)の特別背任事件で、サウジアラビアルートにつながる損失付け替えについて、東京地検が公判で立証を予定する内容が判明した。投機性の高い取引で巨額の損失を抱えた前会長らが、社内や監査法人には事実を隠蔽(いんぺい)していたと主張する方針だ。弁護側は全面的に争う姿勢を示している。
ゴーン前会長、発端は担保50億円 中東の友人から調達
地検が立証予定の内容によると、ゴーン前会長は2006年4月と07年11月、自身の資産管理会社と新生銀行の間で、あらかじめ定めたレートで定期的に円をドルに交換するスワップ取引の契約を二つ結んだ。
円安だと大きな利益を得られるが、円高だと大きな損失が生じる契約で、前会長は日産の株価と連動して利回りが変わる債券を担保として差し入れていた。
そんな折、08年9月にリーマン・ショックが発生。急激な円高でスワップ契約の評価損は同年10月10日~下旬、約11億~24億円に膨らんだ。10月23日以降は、最高で約10億円の担保不足に陥った。
前会長は10月20日以降、新生銀の担当部長2人から、追加担保の差し入れか、契約の一部解除と損失の支払いを求められた。前会長は解約を拒否し、追加担保として日産が債務を保証することを10月24日に打診した。だが、日産の取締役会の承認などを条件とされて諦めた。次に、新生銀から米金融大手に契約を移そうと画策したが、同社の合意を得られなかった。
「最終手段」として10月28…