イランと米国の関係が悪化するなか、イランが中東諸国との外交活動を活発化させている。関係が良好な周辺諸国との対話を通じて敵対するサウジアラビアとの関係改善を目指し、国際世論を味方につける狙いがありそうだ。
イランのメディアなどによると、ザリフ外相は26日、訪れたイラクで同国のハキム外相らと会談し、「イランはこれまで、全ての中東湾岸諸国との不可侵条約を提案してきた。今も締結を考えている」と強調した。敵対するサウジを含む周辺諸国に対話を呼びかけた形だ。米軍の展開によって緊張が高まる、ペルシャ湾情勢についても協議した。
アラグチ外務次官も26日、オマーンやクウェート、カタールへの外遊を開始。27日にはクウェートで「イランは地域的な対話の枠組みを作るため、全ての湾岸諸国と交渉する用意がある」と語った。
イランは、核合意を離脱して対イラン制裁を再開した米国に加え、サウジとも敵対してきた。この数日間のイラン外交の対話姿勢は、周辺国と結束することで米国に屈しない姿勢を示しつつ、イランともサウジとも良好な関係を持つ湾岸諸国を通じてサウジとの「雪解け」をはかる動きとみられている。
イランの地元記者は「経済制裁に苦しむイランにとって、米、サウジ両国と対抗する二正面作戦は得策でない。湾岸諸国と関係を密にして、偶発的衝突を防ぐ狙いもある」とみる。
米国は2日にイラン産原油の全面禁輸を開始し、「イランの脅威が増している」として米軍1500人の増派も決定。ペルシャ湾周辺では、米国とイランの偶発的衝突の恐れも出ている。30日には、サウジ主導で湾岸諸国の首脳会議が開かれる。米・イランの対立で緊張が高まる情勢を協議するためで、対イラン包囲網を作る動きとみられている。
訪日していたトランプ米大統領は27日、日米首脳会談の共同記者会見で「イランの体制転換を望んでいるわけでない」などと述べ、イランとの対話に期待感を示した。だが、同国のロハニ大統領は「今は米国との交渉の時ではない」などとしており、両国の対話の条件は整っていない。(テヘラン=杉崎慎弥)
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ロハニ大統領も「ドアは開かれている」と発言。背景にはイラン経済を支える石油輸出の減少があります。
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