政府が11日に決定した地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」に基づく長期戦略に、原子力の項目に「夢のエネルギー」とされながら実現が見通せない「核融合」の研究推進が盛り込まれた。広く意見を募る土台となった4月の案から加筆、研究推進を打ち出している。
「脱炭素社会」実現を 政府、温暖化対策の長期戦略決定
長期戦略は15、16両日にある主要20カ国・地域(G20)エネルギー・環境関係閣僚会合に向け、11日に閣議決定された。日本政府の取り組みとして、今後国連に提出される。
パブリックコメント募集前の4月下旬に公表された案では焦点の一つである原子力の項目で、「核融合(科学的、技術的実現性の検証)」と記していた。それが最終段階で、核融合エネルギーについて、トカマクとヘリカルという日本が研究を進める二つの核融合の方式を挙げ、「我が国独自のアイデアに基づく方式などの研究を推進し、科学的・技術的実現性の確立を目指す」などと踏み込んだ。
だが、水素爆弾の爆発力の源としても知られる核融合は、独立行政法人や大学などで実用化を目指して研究が長年続くが、基礎技術すら確立していない。太陽内部で起きる反応を人工的に作り、そのエネルギーで発電するが、最低でも1億2千万度のプラズマをつくらなくてはならないのがネックとなっている。そのため、2050年までに二酸化炭素の排出量8割減といった目標に貢献する技術とは考えにくいのが実情だ。
自然エネルギー財団の大野輝之・常務理事は「(核融合の内容を)脱炭素社会をつくる文脈で書く意味はない。原子力には国民的議論があり、パブリックコメント後に入ってきたとしたらおかしい」と指摘する。(松尾一郎)