長期独裁政権が崩壊したアフリカ北東部スーダンの情勢が混迷している。実権を握った軍に対する抗議デモを続けてきた民衆に対し、治安部隊などが発砲。デモを主導するグループは「100人以上が死亡した」と主張し、反発を強める。アフリカ連合は事態を受け、スーダンの資格停止処分を決定したが、自国への波及を恐れる一部の湾岸諸国は軍を支援する姿勢を見せている。
医師や弁護士らでつくるデモグループは「(軍への)不服従」を求め、9日から国民にストライキの実施を呼びかけた。複数の地元住民によると、首都ハルツーム中心部は人通りが少なく、営業をやめる飲食店が目立つという。
昨年末から抗議デモに参加してきた20代の男子大学生は朝日新聞の電話取材に対し「街頭には武装した兵士らがおり、気軽に外に出られる状態ではない。インターネットへの接続も制限されている」と話した。
バシル大統領が30年にわたって長期支配を続けたスーダンでは、物価高騰などを理由に昨年12月から民衆による抗議デモが各地で発生。4月11日に軍がクーデターを起こし、バシル氏は辞任に追い込まれた。
だが、その後もバシル氏を長年支えた軍が軍事評議会を設置し、事実上の暫定政権を発足させたため、民衆が反発。ハルツームの軍本部前を拠点に、連日数万人から10万人近い人々が集まり、民主化や自由を求めるデモを続けた。
軍はデモグループ・野党側と今後の政権運営や民政移管などを協議してきたが、どちらが政権内で主導権をとるかで対立が続いていた。
事態が動いたのは今月3日早朝。治安部隊などが軍本部前で寝泊まりしていたデモ参加者の強制排除に乗り出した。推定30万人の犠牲者が出たダルフール紛争で暗躍し、軍との関係が近い民兵組織の関与が指摘されている。周辺では何時間にもわたって発砲音や爆発音が鳴り響き、近くのナイル川からは数十人の遺体が発見された。
軍事評議会トップのブルハン氏は事件の翌日、「正統性と委任を得るには、選挙しかない」と訴え、9カ月以内に選挙を実施すると突如表明した。
アフリカ連合は6日、文民主導の暫定政権が発足するまで、スーダンの活動資格を停止すると決定。隣国のエチオピアのアビー首相らは、軍とデモグループ両者の協議の仲介に乗り出している。
一方、周辺国のサウジアラビアやアラブ首長国連邦などは、軍側への支援を表明。スーダン軍が、サウジ主導のイエメンでの戦闘に参加していることも考慮したとみられている。軍はアビ―氏と会談した野党指導者らを一時拘束するなど、軍と民衆側の対立が収まるかどうかは不透明だ。(ヨハネスブルク=石原孝)
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