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早朝の漁港に記者
半年ほど前のことにはなってしまうが、昨年の12月12日早朝、雪が舞う青森県むつ市の大畑漁港に、記者はいた。
沖縄や香港の料理店まで、翌日中には新鮮な食材を届けるという「A!Premium」。この港から出る船が取るサケが、むつ市を明日発ち、次の日の午後には香港の著名シェフの手でさばかれるという。
青森発のサケが、本当に翌日には香港に届くのか。漁から料理店までを追跡し、確かめる。それがこの取材の目的だ。
13トンの漁船が白い波をたてて、海岸から200メートルほど離れた漁場に到着した。「寒ぐはねが?」と、漁師たちが代わる代わる声をかけてくれる。漁のおこぼれを狙う鳥たちの「クークー」という鳴き声が響くなか、漁は静かに始まった。
定置網には大きなサケがいくつもかかっていた=2018年12月12日午前、青森県むつ市の沖合、板倉大地撮影
「サケいねえ」
深さ13メートルほどに沈めた定置網を、漁師たちがゆっくりたぐり寄せていく。サケの姿はなかなか見えない。漁師の大室雅道さん(58)は「サケいねえ。香港さ行きたぐねえんでね」。だがまもなく、ビチビチッと網から水しぶきがたち、20匹ほどの大きなサケが引きあげられた。香港用に選ばれたのは、5キロのメスだ。
香港へ運ばれていくサケを手に持つ記者=2018年12月12日午前9時34分、青森県むつ市
サケに別れを告げる
漁の翌日、すなわち13日午前6時半、むつ総合卸売市場の長津潤さん(47)が鮮度を保つために紙を挟んでじょうろで水をかけ、箱に詰める。ふたに「A!Premium」のシールを貼り付け、準備完了だ。明日の午後、このサケは海の向こうの料理店にいる。「香港で会おう」。私はサケに別れを告げた。
■旅客便に吸い込まれ…