黄色や赤の紅葉が夕日に溶けこむ、青森県十和田市の官庁通り周辺。チンチンと音を鳴らしてリヤカーを押しながら家路につくのは、中野渡キンコさん(80)だ。アイスを売り歩いて50年余り。常連客から「やめないでね」「来春も楽しみにしているよ」と声をかけられながら、今シーズンの販売を終えた。
七戸町の農家の生まれ。21歳で結婚し、十和田市に移り住んだという。建設関係の仕事をしていた夫が出稼ぎで体調を崩し、戻ってきた。
「確か十勝沖地震(1968年)の年だった。子どももいたし、何とか生活しなければいけなかった」。それがアイス売りを始めるきっかけだった。
「最初はね、恥ずかしくて。走…