フィリピンの入国管理局は9日、違法コピーした漫画を無料で読める海賊版サイト「漫画村」を運営していたとされる星野ロミ容疑者(27)を、7日にマニラの国際空港で拘束したことを明らかにした。著作権法違反の疑いがあるとして、日本大使館を通じてフィリピン当局に捜査協力の要請が出ていた。今後、日本に送還される見通し。
フィリピン入管広報官によると、星野容疑者は7日、マニラから香港行きの飛行機に搭乗しようとしていたところを、出発ターミナルの外で拘束された。フィリピンに入国したのは5月で、ここ数年は旅行者として出入国を繰り返していた。容疑者の出自に関係するとみられるイスラエルとドイツの在フィリピン大使館も捜査に協力した。
日本政府関係者などによると、星野容疑者は、漫画家の了承なしに無断で作品をウェブ上に掲載する「漫画村」の運営を、2018年4月に閉鎖されるまで続けていた疑いがある。
フィリピンの現地メディアは、日本側の試算で漫画村の侵害による損害が3200億円に上るとして、「過去最悪の著作権侵害」を起こした「最重要指名手配者を拘束した」と報じている。
昨年、被害を受けた漫画家が配信ネットワークを提供する米企業を相手取って漫画村運営者の情報開示を求めた訴訟があり、開示記録から運営者の氏名や住所などが特定されていた。
漫画村に著作権を侵害されたとして刑事告訴していた講談社は9日、「運営者とみられる者が身柄を拘束されたことで本件の全容解明を期待している」などとするコメントを出した。(ハノイ=鈴木暁子)
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海賊版サイト「漫画村」を運営していたとされる星野ロミ容疑者(27)が拘束されたことを受けて、刑事告訴していた講談社の広報室は9日、コメントを出した。全文は以下の通り。
警察とは、一昨年から連携し捜査に協力してまいりました。すでに当該の違法サイトが閉鎖されたあとですが、本日「漫画村」の運営者とみられる者が身柄を拘束されたことで本件の全容解明を期待しています。今後、当該の人物が著作権法違反等で立件されるとしたら、その大きな被害に鑑みて当然のことだと考えます。ただ依然として同様の大規模な侵害サイトを含めて、少なくとも100~200以上の違法な海賊版サイトが存在するとも伝えられています。著作者の才能と権利を守り、コンテンツ創造のサイクルを破壊させないためにも、出版界としてさらには講談社として引き続きさまざまな解決策を講じていきます。総合的な海賊版対策を進めていく際には、民間企業や民間組織のあいだに設けられた協議体の展開も必要です。また一方で司法や政府にもさらなる方策を求めていきたいと思います。