6月初めから、中国では出水期に入り、江西省や安徽省、湖北省、湖南省、重慶市など、多くの地域で洪水や冠水などの水害が発生した。そして、水害が発生するたびに、中国最大の水利プロジェクト「長江三峡ダム」が中国国内外で注目の的となっている。今年の深刻な水害において、三峡ダムはどんな役割を果たしているのだろうか?三峡ダムの放流により、逆に長江中・下流地域の水害が深刻化してしまっているのだろうか?このほど、三峡集団流域ターミナル管理センターの関係責任者を取材し、注目を集めている問題について質問した。環球時報が報じた。
7月19日、ゲートが開けられ水が勢いよく放流される三峡ダム。
長江流域で水害が発生している期間、三峡ダムは、洪水防止の面で、主にどのような作業を行い、どのような役割を果たしたのか?
三峡集団流域ターミナル管理センター責任者:19日までに、三峡ダムは今回の水害において、延べ5回にわたり洪水調整を行い、その洪水調整容量は合わせて約140億立方メートルに達した。7月2日に「2020年長江第1号洪水」が上流で確認されると、ダムに流れ込む水のピーク量は1秒当たり5万3千立方メートル(7月2日午後2時に確認)となった。三峡ダムは、洪水を防ぐだけでなく、洪水ピーク流量を減らす役割も果たす。下流に流れる水の量を1秒当たり3万5千立方メートルまで減らし、減少率は34%に達した。それにより、長江中・下流の洪水防止にかかる負担がかなり軽くなった。
6月29日、ゲートが開けられ放流される三峡ターミナル(ドローンで撮影・肖芸九)。
17日午前10時、三峡ダムに流れ込む水の量が1秒当たり5万立方メートルにまで増加し、「2020年長江第2号洪水」が確認された。19日午後8時、三峡ダムの流れ込む水の量は1秒当たり4万6千立方メートルになり、洪水ピーク流量1秒当たり6万1千立方メートルより、1万5千立方メートル少なくなった。こうして、第2号洪水を無事に乗り切った。
今回の豪雨で、三峡ダムがなかったとすれば、どんな災害が起きていたと考えられるか?
三峡集団流域ターミナル管理センター責任者:1998年に長江の全流域で特大規模の洪水が発生し、長江で最も険要な荊江区間の沙市ステーションの水位は最高で45.22メートルまで上昇し、保証水位を0.22メートル超えた。洪水発生の危険が非常に高まり、大勢の軍人と民間の人がそれを防止するための対策を必死に講じた。シミュレーションによると、当時、三峡ダムが建設済みだった場合、同ステーションの水位は44.5メートルを超えることはなく、長江中・下流の洪水防止のための負担はかなり軽減していただろうということが分かっている。今年、三峡ダムがなかったとすれば、洞庭湖城陵磯地区や■陽湖湖口(■は番へんにおおざと)は保証水位を超えて、一部の洪水発生時に溢れた水を貯留しておくための遊水地が運用されていただろう。また、武漢区間の漢口ステーションの水位はもっと上がり、長江中・下流の洪水防止のための負担は非常に重くなっていただろう。
6月29日、ゲートが開けられ放流される三峡ターミナル(撮影・肖芸九)。
現在発生しているような水害状況が今後も継続的に続いた場合、三峡ダムには洪水調整を継続する十分の能力があるか?
三峡集団流域ターミナル管理センター責任者:これまでの洪水調整により、三峡ダムの水位は、145メートルから155メートルに上がり、56億立方メートルの水を貯めている。三峡ダムの洪水調節総容量は221.5億立方メートルなので、まだ約170億立方メートルの容量が残っていることになる。継続して洪水調整を行う能力は十分にある。しかし、もしこれから三峡ダムより下流の地域で豪雨が集中した場合、それぞれの都市の洪水防止施設で解決する必要が出てくる。しかしその場合においても、三峡ダムも上流から流れてくる水をできるだけ貯え、下流に流す水量を減らすことで、下流の都市の負担を軽くし、水害発生防止をサポートすることができる。
三峡ダムは「変形」しているという声もあるが、本当か?
三峡集団流域ターミナル管理センター責任者:現在、三峡ダムは安全かつ良好な状態で運用されている。「変形」やその他のリスクは発生していない。三峡ダムは、一部の人が想像しているように、一撃に耐えることもできないような脆弱なダムではない。
三峡ダムが「変形している」や、「崩壊の危険がある」としているのは、人々の注目を集めるためのデマに過ぎない。科学的で詳細なモニタリングデータが何もない憶測は、非科学的で、無責任な素人がすることで、下心がある可能性がある。
今年、三峡ダムで連続的に放流が行われ、中・下流の水害を深刻化させたという声もある。■陽湖水系の水害は、三峡ダムの放流とどれほど関係があるのか?
ダムの放流を実施したからといって、ダムが洪水を防止できなかったというわけではない。例えば、今月2日午後2時、三峡ダムに流れ込む水のピーク流量が1秒当たり5万3千立方メートルに達した。長江水利委員会の調整指令に基づいて、三峡ダムからの放流量は1秒当たり3万5千立方メートルに抑制された。その際、三峡発電所の発電設備34台全てを運用するのに利用する水量は1秒当たり約3万1千立方メートルだった。つまり、その残りの1秒当たり約4千立方メートルの水をゲートから流さなければならなかった。三峡ダムは放流を行ったものの、その放流量は1秒当たり3万5千立方メートルで、流れ込む水の1秒当たり5万3千立方メートルより少なかったため、洪水防止の役割を果たしたと言える。三峡ダムに洪水調整により、■陽湖の洪水防止の負担が軽減され、同湖湖口ステーションの保証水位も守られた。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年7月22日