深度100メートル級の深いダムにおける安全確保の技術的障壁を突破し、水中検査のための小型有人潜水作業プラットフォームを開発することは、ダムの検査や緊急事態対策に関する国家重点研究開発計画の目標の1つとなっている。科技日報が伝えた。
「我々は『禹竜』号ダム深部検査有人潜水艇の設計、建造、調整、プール試験を前後して完了させ、タイプの異なる3つのダムでモデル応用試験を行った。このうち錦屏1級水力発電所で行った試験では最大作業深度が200メートルを超えた」と、「禹竜」号プロジェクトの責任者である南京水利科学研究院前副院長の蔡躍波氏は説明する。
12月初めに雅礱江錦屏1級水力発電所で開かれた専門家諮問会議で、中国工程院院士(工学アカデミー会員)の張建雲氏がトップを務める専門家チームは「『禹竜』号の開発によって、初めて水利・水力発電業界における深部の複雑な環境における有人潜水検査装備の0から1への突破が実現し、ダム深部検査有人潜水艇における複数のキーテクノロジーを確立し、大型ダムの安全維持と対策決定を装備技術面から保障した」との認識で一致した。
ダムの水中検査においてしばしば直面する難題は、無人潜水艇や潜水士の撮影した写真はエンジニアが真に必要とするものとは限らない上、エンジニア自身は往々にして潜水することができないという点だ。
「ダムのエンジニアが有人潜水艇に乗り現場で診断を行えば、問題解決の助けとなる」と、国家エネルギー局ダム監察センターのチーフエンジニアである張秀麗氏は語る。
南京水利科学研究院が中国船舶集団第702研究所などと共同開発した潜水艇「禹竜」号は、この難題を解決した。長さ4.7メートル、幅と高さ約2.4メートル、総重量6.6トンで、2人が搭乗でき、設計上の最大潜水深度は300メートルに達する。
「『禹竜』号は開放角90度の大直径クラウン型観測窓を備え、観測視野と検査効率を大幅に高め、専用の洗浄・トレーサーツールを搭載すると同時に、3D撮像、3Dレーザ測距などの作業ツールをモジュール化して搭載でき、大型ダムの検査作業などに非常に適している」と、「禹竜」号のチーフエンジニアである中国船舶集団第702研究所の王磊研究員は説明する。
しかし、エンジニアを乗せてダムを近距離で「問診」するのは、そう簡単なことではない。蔡氏は、「ダム深部は視程が極めて悪く、潜水艇では作業時に高速の水流による衝撃も受ける。堤体に衝突しないことを前提に精密な水中測位を実現することが『禹竜』号の開発過程において最初に解決しなければならない技術的難題だった」と指摘。
蔡氏は、「ダム建造物は音を強く反射するため、従来型の音響測位方式ではダム深部での有人潜水艇による測位ニーズを満たすのは困難だ。この難題を解決するため、『禹竜』号プロジェクトチームは慣性・音響測位、ブイによる測位と物理測定を組み合わせたマルチ情報融合技術を採用して、精密な測位を実現した」と説明する。(編集NA)
「人民網日本語版」2020年12月21日