「超高温」と「超低温」が共存し、「超強磁場」と「超大電流」が並行する。地球上で「人工太陽」を作り出すためには、性能が極めて特殊な材料が必要になる。新春を控え、記者は中国科学院合肥物質科学研究院を訪れ、中国の「スーパー材料」の無から有への変化や追いつき・追い越しに関する多くのエピソードを耳にした。新華社が伝えた。
核融合反応を引き起こすためには数千万度、さらには1億度以上の高温が必要だ。一般的な材料はこれほどの高温に耐えられない。磁力を「磁気ケージ」の中に閉じ込めることが実行可能なプランの一つだ。しかし強磁場を生むためには「超大電流」が必要で、電気使用量を一般的な家庭用エアコンの数千倍、さらには数万倍にしなければならない。これにより大きな熱エネルギーが生まれ、一般的な導体が焼き切れてしまう。
中国工程院の李建剛院士は「超伝導は特殊条件下で電気抵抗をゼロにする材料で、この特性を利用し導体の発熱を回避し、人工太陽の長期稼働を実現できる。中国が人工太陽の開発を開始した当初、超伝導技術は少数の先進国に握られていた。海外から超伝導材料を購入しようとしても、販売の約束を反故にされたり、高い値段をふっかけられたり、さらには3流製品しか売ろうとしなかったりした」と述べた。
李氏は「当時、国の工業の基礎が脆弱で、科学研究経費も余裕がなかった。材料のボトルネックに直面した我々は、自分で作ることを決め、建設しながら開発を行った。全超伝導トカマク核融合実験装置(EAST)の建設において、60件以上のキーテクノロジーが生まれた。必要な超伝導や低温などの先端材料の9割を自分の力で研究し、自分の工場内で着々と試作してきた」と続けた。
超伝導材料、超伝導コネクタ、超伝導配線、大型磁性体システムなど、中国は約20年のたゆまぬ努力により世界先端の超電導技術を持つようになった。中国科学院合肥物質科学研究院副院長を務めるプラズマ物理研究所の宋雲涛所長は、「人工太陽の開発が、中国の超電導材料産業を20年前進させたと言える。今や中国は超電導材料の世界最大の輸出国になり、技術封鎖の対象から主要サプライヤーになった」と説明した。
中国科学院合肥物質科学研究院プラズマ物理研究所の王騰博士は「1億度にのぼる火の玉は衝突する物すべてを燃やす。人工太陽の筐体の壁の材料はもう一つの難点だ。強磁場に閉じ込められるが、それでも「聞き分けの悪い」高温プラズマが逃げ出し、壁にぶつかりそれを破壊してしまうことがある」と述べた。
王氏は「当初EASTが使っていたグラフェン材料の熱負荷能力は1平方メートルあたり1MWだった。今や筐体の壁の材料は第3世代まで発展し、独自開発したタングステン銅合金を使うようになり、熱負荷能力は1平方メートルあたり20MWに向上した」と述べた。
外径11メートル以上、総重量400トン以上のPF6コイルがしばらく前に、フランスの国際熱核融合実験炉(ITER)の現場で、最終検収テストに合格した。中国科学院合肥物質科学研究院が開発したPF6は、現在世界で最も重く、技術の難易度が最も高い超伝導電磁石だ。
宋氏は「PF6の独自開発に6年を費やした。この非常に苦しい歩みがなければ今日の進歩はなかった。コア技術は他国から貰えず、購入できないため、しっかり自分で握らなければならない」と話した。
無から有へ、研究開発を頑張り、追いつき・追い越していく。自立自彊の科学者精神が、人工太陽を支える「中核スーパー材料」になった。
李氏は「未来の核融合変電所は、365日・24時間休まず稼働することになるだろう。これにはより多くの、より高性能のスーパー材料が必要だ。これは人工太陽開発の最大の技術的難題であり、新段階の科学研究者の取り組みの方向でもある」と述べた。(編集YF)
「人民網日本語版」2021年2月10日