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「消費者白書」認知症高齢者のトラブル相談増“見守りが必要”

ことしの「消費者白書」が13日閣議決定され、認知症の高齢者が訪問販売や電話勧誘で不要な契約をさせられるなどのトラブルの相談が増えているとして、周囲の見守りが必要だと指摘しています。

「消費者白書」によりますと、去年1年間に全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数はおよそ90万件で、前の年より1万4000件余り減りました。

このうち、認知症などで十分な判断ができない高齢者の相談は9618件で、この10年間で最も多くなりました。

相談内容は「屋根の防水工事を契約させられたが、取り消したい」など、事業者に勧められるままに不要な契約や、買い物をさせられたものが多いということです。

「訪問販売」と「電話勧誘」によるものが46%余りを占めていて、相談のほとんどは親族など本人以外から寄せられているということです。

消費者庁は、認知症の高齢者本人は、トラブルにあっているという認識が低いため、問題が顕在化しにくい傾向があり、周囲の見守りが必要だと指摘しています。

このほか、消費者白書では、SNSに関する相談が8万6000件余りと、これまでで最も多く寄せられていて、副業や著名人の名前をかたった投資の勧誘などに関連するトラブルが増えているということです。

伊東消費者相「今後さらなる見守り活動の活性化進めたい」

認知症などで十分な判断ができない高齢者の相談件数が、過去10年で最多となったことについて、伊東消費者担当大臣は、「重要な課題であると認識しており、今後、さらなる見守り活動の活性化を進めていきたい。消費者の皆様には、周囲の高齢者の方がトラブルに巻き込まれたかもしれない場合も含め、少しでも不安に思ったら、消費者ホットライン『188』にご相談いただきたい」と述べました。

「訪問販売」による相談が33.5%で最多

 

「消費者白書」によると、寄せられた消費相談の購入形態は、認知症などの高齢者の場合「訪問販売」による相談が33.5%で最も多く、12.8%だった65歳以上の高齢者全体の2.6倍にのぼりました。

また、「電話勧誘販売」による相談は認知症などの高齢者は12.8%で、高齢者全体の1.7倍と高い傾向でした。

認知症の高齢者も利用している大阪 浪速区の訪問看護の事業所では、去年1年間に認知症の4人の利用者から自宅を訪れる業者に「布団を購入するよう何度も薦められるが購入したほうがいいのか」とか、「資産運用の勧誘を受けている」などの相談を受けたということです。

このうち、週4回、訪問看護を利用している認知症の83歳の男性の家には、正常に使えるエアコンが設置されているにもかかわらず、新品のエアコンが開封されないまま部屋に置かれていたといいます。

不審に思った看護師が男性に尋ねたところ「家に電気屋が来て、薦められたので買ってしまった」と話していたということです。

さらに、エアコンの隣には、最近購入したと見られる箱に入ったままのガスヒーターも置かれていました。

男性は取材に対し「買いませんかと薦められ、その言い方が上手だったので買ってしまった」と話していました。

ほかにも男性の家には「土地を売ってほしいという業者が自宅をよく訪ねてきた」ということで、事業所では弁護士に相談して財産管理などを行う成年後見制度の利用につなげたということです。

この事業所では認知症の利用者のトラブルを防ぐため、ほかの事業所とも連携して看護師やヘルパーなどができるだけ家を訪ね「人の出入りがある家」と周囲が分かるような取り組みを進めているということです。

「ビジナなんば訪問看護ステーション」の看護師の吉田和史さんは「本人の自尊心を傷つけないようにたとえ何かを購入していても否定はせずにまず話を聞くようにしている。スタッフ間で情報共有をして、見守りを続けることでトラブルを防ぎたいと思う」と話していました。

専門家「相談件数は氷山の一角」

認知症高齢者の消費者問題に詳しい京都府立医科大学の成本迅教授は「認知機能が低下してくると積極的に買い物に出かけることが減るほか、社会から孤立して生活をしている人もいるため、家に訪問してくる人がいるとそれだけでうれしくて相手に『何かしてあげたい』と思って、購入や契約をしてしまう人もいるのではないか」と指摘します。

成本教授は「認知症の人は自分がトラブルに遭っていても、トラブル自体に気付かなかったり、恥ずかしくて相談できなかったり、どこに相談したらいいかわからなかったりする。トラブルそのものを忘れてしまっていることもありなかなか相談に結び付きにくい特徴がある。そのため、表に出ている相談件数は氷山の一角だと思う」としたうえで、「高齢者が増えている中、認知症や認知機能が低下している人が地域に一定の割合で存在している。そうした人たちに対して、本人の自立性も尊重しながら、見守りのネットワークを密にしていくことが必要だ」と話していました。

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