米大手電話会社のSBC Communications Inc.(以下SBC社)は,米Microsoft Corp.や米Yahoo! Inc.などと組み,IP(internet protocol)上のマルチメディア配信戦略を強化する。まず,SBC社はIP上の動画配信サービスの提供に向けて,Microsoft社が提供するIP動画配信用のソフトウエア・プラットフォーム「Microsoft TV Internet Protocol Television Edition」(以下Microsoft IPTV)を採用すると発表した。これとは別に,SBC社はYahoo!社と協力して,いくつかのエンタティンメント通信サービスを始めることも発表した。
SBC社の動きの背景には,米国市場における通信業界とケーブルテレビ業界の戦いがある。ケーブルテレビ業界は,インターネット接続サービスの強化に動いており,動画やブロードバンド通信に加えて,VoIP(voice over internet protocol)による電話サービスも提供できる。米国で「トリプル・プレイ」と呼ばれており,ケーブルテレビ業界は通信業界の本業である音声電話サービスに進出しようとしている。これに対して通信業界は,ケーブルテレビ業界を戦うために,動画を含むマルチメディア・サービスの強化を急いでいる。
米国でも光ファイバー上にマルチメディア SBC社は2005年第1四半期からFTTN/FTTP(fiber to the node/fiber to the premise)による光ファイバと同軸ケーブルの組み合わせた「Project Lightspeed」の建設を開始する。Project LightspeedにSBC社は40~60億米ドルを投資して,2007年末までに1800万世帯に対して20~39M/ビット秒のIP接続を提供する計画。SBC社は主にこのProject Lightspeedのネットワークを活用して,Microsoft IPTVを利用するコンテンツ提供を行うものと見られる。Microsoft IPTVを採用するサービスは,2005年中頃に試験的なサービスを始め,2005年末までに商用化する予定。
SBC社とYahoo!社の協業はSBC社の既存DSLサービス用に2001年11月から始まっているが,今回の発表についてはProject Lightspeed上でのサービス展開を狙っている。VOD(video on demand)やインターネット・ラジオ,デジタル写真関連のサービスを予定する。さらに遠隔地からHDD録画機へのアクセス・サービスも計画する。SBC社の携帯電話事業部門であるCingular Wireless社では,SBC Yahoo!という名称のサイトを設けて,携帯電話機向けのエンタティンメント関連情報提供や,HDD録画機の遠隔地からのアクセスなどのサービスを提供する。
さらにYahoo!社との協力によってSBC社は,統合通信サービスを導入する予定。たとえば,1つのメール・ボックスに,電子メールや有線/無線電話のヴォイス・メッセージ,ファックスの情報を集積する。アドレス・ブックも,コンピュータや電話,テレビ受信機からアクセスして利用できる。SBC社とYahoo!社の新しいサービスは2005年中に開始する予定となっている。 |