「2004年10月27日に発表した前回の修正予想の際は,携帯電話機向けの液晶ドライバICは底を打ったと判断していた。直近3カ月のBBレシオ(受注額/出荷額)が同年9月以降上昇し始めたからである。こうした指標を基に,2004年度下半期の受注高の予測を立てていた。実際の受注額が予測と乖離(かいり)し始めたのは,11月に入ってからである。受注実績を週次で集計しているが,潮が引くように週ごとに受注が予測を下回っていった――」。NECエレクトロニクス 執行役員兼財務本部長の佐藤博氏は記者会見で,下方修正の背景をこう語り,悔しさをにじませた。
同社は2005年1月26日,2004年度(2004年4月~2005年3月)の通期連結業績の下方修正を発表した。売上高は7100億円(対前年同期比横ばい。半導体部門は6840億円),営業利益は330億円(同42%減),税引前利益は300億円(同32%減),純利益は185億円(同34%減)とした。従来予測に対する引き下げ幅は順に350億円(半導体部門は360億円),170億円,160億円,95億円。今回の下方修正は,2004年10月に続き今期2回目。
「機器メーカーの在庫調整が予想以上」
今回の下方修正に至った最大の要因は,液晶ドライバICの受注がこの3カ月で従来以上に低迷したことである。パソコンのディスプレイなど大型パネル向け,携帯電話機など中・小型パネル向けのいずれも予想を下回ったとしている。特に同社が注力している,主に日韓メーカーに向けたQVGA品など高精細の液晶パネルの下げ幅が大きかった。「当社製部品の納入先であるモジュール・メーカーや機器メーカーはJIT(just in time)を推進しているものの,実際にはある程度の在庫を抱えている。第3四半期(2004年10月~12月)にこれらの在庫を圧縮する動きがあったようで,これが部品メーカーである当社に波及した」(佐藤氏)。このほか,DVDレコーダやデジタル・テレビ向けの画像処理LSIの在庫調整も「第3四半期に予想以上に進んだ」(NECエレクトロニクス)としている。液晶ドライバIC関連の生産設備の稼働率は,80%台前半と低調。ただしシステムLSI関連の生産設備はほぼフル稼働しているもよう。
第4四半期の受注については,「パソコンの大型パネル向け液晶ドライバICは,在庫調整が一段落した。携帯電話機の小型パネル向け液晶ドライバICは引き続き低迷する」(佐藤氏)とみている。本業以外の部分では,第3四半期に外部の製造委託企業との契約を縮小するなどの経費削減策を講じた。この効果が第4四半期(2005年1月~3月)以降に現れ,営業利益の下げ幅を80億円圧縮するとしている。
今回の通期業績修正と併せて発表した第3四半期決算は,同社が1月7日に公表した見込み値とほぼ同等である。売上高は1653億円(半導体部門は1607億円),営業利益は12億円,税引前利益は2億円,純利益が5億円である。対前年同期比で順に6%減,4%減,93%減,99%減,94%減としている。 |