【メダン(インドネシア・スマトラ島)岩崎日出雄】住宅地に墜落し、巻き添えも含めて140人以上が犠牲になったインドネシア・スマトラ島メダンでの航空機墜落事故。生き残った乗客は病院で「生きているのが信じられない」と声を震わせた。現場では、機体で破壊された家屋の下敷きになってはい出した人の表情はこわばったままだった。現場には数万もの人たちが詰めかけ、捜索活動を見つめていた。
墜落機に搭乗しながらかすり傷で済んだメダン市在住の病院職員、ロハディ・シテプさん(35)は、収容先の病院で墜落当時の様子について語った。「離陸後しばらくして、建物や木が大きく見えることに気付いた。機内放送はなかった。突然、操縦室付近で爆発音がし、機内前方が炎上した。その後はものすごい速さで落下し、バンッという大音響を聞いた瞬間に気を失った。気が付いたら病院にいた」
シテプさんの目はうつろで声は弱々しく、話している間中、唇が震えていた。同じ病院の霊安室には黒焦げの遺体や遺体の一部がぎっしり並んでいた。
メダン空港から直線距離で2、3キロにある現場は幹線道路で、両脇に民家や商店が建ち並ぶ。機体はそれらの4、5軒に接触しながら、墜落した模様だ。路上には、バラバラになった機体が散乱していた。レンガ造りの民家は跡形もなくなり、付近を埋めたレンガや家財道具の破片の中に巨大な車輪が見えた。
◇住民「奇妙な音の後、下敷きになった」
事故当時、その隣の喫茶店でコーヒーを飲んでいた自動車販売店経営、イヤン・タリガンさん(37)がこわばった表情で語る。「店外の椅子に座って休んでいると、奇妙な音が近付いてきた。次の瞬間、何が起きたのか、体に材木やがれきが一気にのしかかり、下敷きになった」と振り返る。タリガンさんは無事だったが、同じがれきの下になった50歳ぐらいの女性は息絶えていたという。
路上には、尾翼などが長さ5、6メートルに切り取られ、ぐしゃぐしゃの無残な形で横たわっていた。破片の炎上を放水で消し止めたため、道路は水浸しだった。走行中に巻き添えになったミニバス(ワゴン車)2台が横転し、黒焦げになっていた。
道路の反対側では、機体から延焼した2階建てアパートが2棟、焼け焦げていた。救助活動の男性(28)によると、学生などが逃げ遅れ、犠牲になったという。
この地域は航空路の真下で、離着陸する飛行機が約200メートル上空をごう音を立てて通過する。現場を訪れた人たちは、上空を飛行機が通過するたびに「おおーっ」と声を上げていた。
毎日新聞