8日、日銀が発表した8月の「貸出・資金吸収動向」で、不良債権処理関連の特殊要因を除いた民間銀行の貸出残高が前年同月比でプラスとなった。98年10月の統計公表以来初めてだが、不良債権処理にめどをつけた銀行が、積極的な貸し出しに姿勢転換し始めたことを示している。
90年代初めのバブル崩壊後、デフレが深刻化していく中で、銀行は不良債権処理に追われ、貸し出しを極端に消極化させた。銀行は「貸し渋り」や「貸しはがし」などと非難されたが、民間企業側も、生き残りをかけたリストラで、過剰債務の削減を優先したことから、資金需要そのものも低迷し、貸し出しの減少につながった。
だが、今年3月末の大手行の不良債権比率の半減目標達成や、景気回復基調を受け、銀行は収益拡大を目指し、住宅ローンや中小企業向け融資の拡大にしのぎを削るようになった。リストラが一巡した企業側も、設備投資を拡大するなど「ようやく借金返済一辺倒でなくなる兆しが出てきた」(大手行幹部)。
日銀の福井俊彦総裁は、8日の会見で「貸し出しの増加で、マネーサプライ(通貨供給量)を押し上げる力が強まっていくと読んで間違いない」とデフレ脱却に向けた期待感を示した。【平地修】