約1000億円を投じて阪神電鉄株の約38%を保有した村上世彰(むらかみ・よしあき)氏(46)率いる投資ファンド(通称・村上ファンド)が、筆頭株主としてタイガースの球団社長人事に介入する動きがあることが4日、明らかになった。これまでの接触で、ファンド側は牧田俊洋球団社長(55)に代わる新社長候補として、三井住友銀行特別顧問の西川善文氏(67)ら大物経済人の名前を挙げたもよう。今週中にも持たれる電鉄首脳との話し合いで、正式に実現を要求する可能性が高い。
電鉄株の大量保有が明らかになった9月27日の前後、阪神電鉄の幹部と村上世彰氏は数回にわたり会談している。「阪神電鉄現経営陣の方々は、真摯(し)に企業価値・株主価値向上を考えていただける立派な方々であると、今までの面談等を通じて私どもは感じている」とファンド側は3日の声明で、会談の感想を明らかにしている。
話し合いの中でファンド側の意向として出されたのが「タイガース球団社長」人事に関する注文だった。強い発言力を持つ筆頭株主として「球団社長には著名経済人を置くべき」と主張。具体的な候補として三井住友銀行特別顧問・西川善文氏、日銀総裁・福井俊彦氏(70)らの名前を挙げたという情報がある。
親会社の阪神電鉄ではなく、なぜ子会社タイガースの社長のポストを求めるのか。そこには関西のシンボルとしてタイガースの卓越した“資産価値”があるからだ。電鉄より市民、ファンから愛されるタイガースをファンド側は将来的に上場し、電鉄グループから独立させる狙いではないかとの見方も出ている。
9月27日に発表した「阪神タイガースという偉大な球団とそのブランドの価値を高めたい」という戦略を実現するためにも、グループの子会社から脱却させ、収益性の高い企業体に変えるためには、経済界の実力者をトップに据えることが必要とみてもおかしくはない。
西川氏、福井氏はタイガースファンの経済人として知られ、ともに星野仙一SD(58)の後援会「虎仙会」のメンバーでもある。また福井氏は日銀総裁になる前、村上氏が率いるM&Aコンサルティングの顧問を務めていたこともあり、球団とファンドともに接点がある経済人だ。
阪神電鉄・西川恭爾社長(66)はこの日、本紙の取材に対し「球団社長について、要求しているとは私のところまで来ていない」と答えた。
また村上ファンド広報は「阪神電鉄の件についていつ、誰と、どういう話をしているかは答えられない」と対応した。今週中にも予定される両者の話し合いで、ファンド側が球団運営についてさらにどんな要求を出してくるか、そして電鉄側がどう応じるかに注目が集まる。