TBSに経営統合を提案した楽天が目指すのは、ニッポン放送株を大量に買ったライブドアと同様、メディア事業参入によるネットと放送の融合だ。しかし、両社の行動は似ているようで違いも多い。楽天は昨年のプロ野球参入で、先行したライブドアを逆転したが、今回もライブドアの前例からの「学習効果」を生かそうとしているようだ。【位川一郎】
ライブドアは、フジテレビジョンへの経営参画が「本丸」とみられたが、そのテコとしてフジの親会社の立場にあったニッポン放送の株式を買った。しかし、4月中旬に和解するまで、同放送を実際に経営するかどうかはっきりしなかった。これに対し、楽天はTBS本体の株を15%余り取得し、正面から経営統合を提案。目標を明確に打ち出した。
両社の最大の違いは、敵対的姿勢の度合いだ。ライブドアの堀江貴文社長が「詰んでいるのに穴熊(あなぐま)をやってもしようがない」などとフジ、ニッポン放送の経営陣への批判を繰り返したのに対し、楽天の三木谷浩史社長は13日の会見で、TBSと友好的な話し合いを続ける考えを強調。従業員への配慮や放送の公共性にも言及した。ただし、TBS側には、楽天が強行策に転じることへの警戒感もある。
目標は、ともにポータルサイトでトップのヤフーを逆転すること。しかし、具体化する条件では楽天が一歩進んでいる。番組をネット配信するには、出資する動画配信サイト「ショウタイム」がすでにあるし、テレビ番組と連動したネット通販をするなら仮想商店街トップの「楽天市場」が使える。楽天は13日、TBS側に約100ページの提案書を渡したという。一方のライブドアは、和解後にフジと業務提携交渉をしているが、大型案件は実現していない。
放送局側の反応も異なる。フジとニッポン放送は長期間、堀江社長からのトップ会談の要求を拒否し続けた。TBSは、楽天の大量取得が明らかになった直後の13日に、井上弘社長が三木谷社長と会った。双方に、ニッポン放送騒動のような対立を避けたいという意向もうかがえる。