なんといっても、チェ・ゲバラの若き日を描いた「モーター・サイクル・ダイアリーズ」のブラジル人監督ウォルター・サレスが監督しているのが目玉。これがハリウッド進出第1作だそうで、敏腕スタッフが結集したのも、「タイタニック」「スター・ウォーズ/エピソード1」を手がけた大物ビル・メカニックが製作を担当したのも、サレス監督にかける期待の大きさからではないでしょうか。
オリジナルは、鈴木光司原作、中田秀夫監督のヒット映画「仄暗い水の底から」。資料を見るに、あまり大々的にそのことが書かれていないことから「別の目で見てね」という、宣伝会社のささやかな希望がくみ取れます。
離婚調停中の母親が、6歳の娘とともに新たなスタートとして引っ越してきたマンションで、水の怪現象に巻き込まれる話。知ってる人も多いでしょう。ラストは日本版と違ったものになっています。
雨がずっと降っている。ファーストシーンからして、とてもいい感じ。
トラムという乗り物から見える風景がさびしく、母と娘のこれからをうまく暗示しています。
不安な感情や恐怖心など、目に見えないものを描くのがホラー作品ですが、人の感情をメーンにもってきて、情感豊かな作風に仕上げています。
母親の愛を求める少女の悲しみ、我が子を守ろうと懸命になる母の愛情……。都会の片隅に追いやられた人の孤独感が、痛々しいほどに伝わってきます。
キャストがいい。娘役を演じる子役アリエル・ゲイドが、大きなお目々クリクリで、もうもう、ものすごくかわいい。ホラー映画初出演となったジェニファー・コネリーも母親役を力演。「頑張れよ」と思いながら見入ってしまう。
そして、この映画を成功させている一因が、母子が恐怖にのまれるアパートがあるルーズベルト島という土地。じめじめしていて「ここなら出そう」と、リアリティーもある。オリジナルを「早く引っ越せばいいのに」と思いながら見ましたが、主人公のダリアが、簡単に引っ越せない状況にあることがよくわかるので、そのあたりにもリアリティーがある。さすが、サレス監督が「どれだけリアルに見せられるか」にこだわったというだけある。
ところで、Jホラーの人気も衰え知らずで、今後も続々と公開される予定にある。が、どうもCG映像や残酷シーン、役者の演技力に頼りすぎている感が否めない。B級ホラーでない限り(ただしB級に徹すれば、それはそれで面白いものになるが)、この映画のように、キャラクターに感情移入できるような作りに期待したい。[文・イラスト、上村恭子]
(日比谷スカラ座ほかにて全国公開中)
☆プチ見どころ
その1 小学校のシーンがかわいい。
その2 アリエルのアップで涙ポタポタ~。かわいすぎ!