女優賞を獲得した韓国のキム・ミニ(左)とホン・サンス監督
米国のトランプ大統領の政策や英国のEU離脱の選択――。ベルリン国際映画祭(19日閉幕)では、例年に増して政治的な発言や質問が飛び交った。主演作の上映に伴って会見したリチャード・ギアは「トランプ大統領がやった最も恐ろしいことは、難民とテロリストを混同させたことだ」と批判した。
SABU監督作品は受賞ならず ベルリン国際映画祭
特集:ベルリン国際映画祭
ここ数年、最高賞の金熊賞の受賞結果にも政治色が色濃く反映されてきた。一昨年はイランで当局の監視下にあるジャファル・パナヒ監督の「人生タクシー」、昨年は難民が押し寄せるイタリアの小島を舞台にしたジャンフランコ・ロージ監督のドキュメンタリー「海は燃えている」が受賞した。
地元紙などで金熊賞の最有力候補の呼び声が高かった、鬼才アキ・カウリスマキ監督の「アザー・サイド・オブ・ホープ」。フィンランドに逃れたシリア難民の悲哀を、カウリスマキ流のユーモアと人間愛で描いた。だが、カウリスマキは監督賞だった。
実は政治的な発言のみに注目が集まることに、高い関心と同じくらいうんざりした空気も流れていた。「我々アーティストはもっと洗練された方法で、人々の心の奥底に訴えかけることができるのでは」。ある記者会見ではトランプ大統領の移民政策に対する質問が出た際、「ここは映画祭だ。映画の話をしよう」と司会者がやんわりと制止する一幕もあった。
今年は約400作品が上映された。映画祭トップに当たるディレクター、ディーター・コスリックは「多様性は単一主義に打ち勝つ。同性愛やマイノリティーに対する差別や迫害とどう闘うかが作品を選ぶ際のテーマだった」と語った。上映作品を一覧すれば、すでに世界に対して強烈なメッセージを伝えていることがわかると強調した。
今年の金熊賞に選ばれたのは、ハンガリーのイルディコ・エンエディ監督の「オン・ボディー・アンド・ソウル」。人間の奥底に秘められた感情を繊細に描き、多くの人を魅了した。エンエディは1989年にカンヌのカメラドール(新人賞)を受賞した、現在61歳のベテランの女性監督。長編の制作から遠ざかっていたが、久々のカムバック作品で最高賞に輝いた。
静寂に包まれた雪化粧の森の中…