「かなちゃん、怖かったでしょ」。東京都渋谷の美容外科医、池田優子さん(47)の長女、果菜子さん(21)=明治学院大経済学部4年=が自宅近くで襲われた身代金目的事件で、再会を果たした果菜子さんと母優子さんは、互いに抱きしめ合った。27日午前6時過ぎ、2人は警視庁渋谷署前で、約6分間記者会見。恐怖や警察への感謝を口にし、時折目を潤ませながら、絞り出すような声で質問に答える果菜子さんの両手を、母はずっと握りしめていた。
誘拐された時と同じ白キャミソールにジーンズ姿の果菜子さんは、まず「ほっとしてます」。監禁中の様子については「逃げたい気持ちでいっぱいだったけど、すごく怖くて、身動きがとれなかったです」と語った。
「無事保護」の一報は、27日午前1時半ごろ届いた。「ママ、ごめんなさい。私が悪かったわ。ごめんなさい」。電話越しに聞こえる果菜子さんの言葉に、優子さんは涙が止まらなかった。「無事で良かった」。茨城県古川市から駆けつけた祖母、小林汎子(ひろこ)さん(78)らと歓声を上げ、万歳をして抱き合った。
「疑心暗鬼にかられたり、自分との葛藤(かっとう)があったり……」。優子さんは、警察に通報したことを悔やんだこともあった。小林さんと自宅リビングで連絡を待つ間、興奮したり、慰め合ったり。飼っている猫をなで、果菜子さんの写真を見て落ち着こうとした。それでも、電話が鳴るたびに極度の緊張で脈が速まり、隣の炊事場へ逃げてしゃがみ込む。10時間以上、そんな繰り返しだった。
結局は「警察の人たちを信じるしかない」という思いに至った。果菜子さんから「(警察が突入した様子に)感動した」と聞いた優子さん。「日本の警察の素晴らしさに本当に感謝してます」と述べた。【川上晃弘、鳴海崇】
毎日新聞 2006年6月27日 11時38分 (最終更新時間 6月27日 11時47分)