「ポスト小泉」の最有力候補とされる安倍晋三官房長官が、9月の自民党総裁選に向けた政権構想の原案となる内容を盛り込んだ自著「美しい国へ」(文春新書)を20日に出版する。この時期に政策提言を公表することに対し、自民党内からは「現状で優位に立っている安倍氏への支持をさらに加速させる狙いがあるのではないか」といった見方が出ている。
同書は北朝鮮問題を中心にしたアジア外交や、憲法、教育、社会保障などについて、安倍氏の基本的な考え方をまとめたもの。
アジア外交をめぐっては、小泉純一郎首相の靖国神社参拝を受けて首脳会談に応じない中国、韓国両国の姿勢を批判。インド、オーストラリアなども視野に入れた幅広い関係の確立を主張しているほか、「小泉改革が格差社会を生んだ」との批判に配慮、自らが提唱する再挑戦可能な社会作りである「再チャレンジ支援策」なども盛り込んでいるとみられる。
安倍氏は、主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)終了後に予定していた出馬表明を8月下旬に先送りした。著書出版も同様に遅れるとの見方も出たが、安倍氏周辺は「当初予定通り20日に出版することで、中だるみを避けたい」と語る。【犬飼直幸】
毎日新聞 2006年7月18日